ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

実績を上げ、世界各国民の信頼を醸成して行く必要がある。信頼が高まれば各国からの権限移譲やリーダー的諸国の団結も自づと促進される事になる。国連が手がけなければならない具体的事項は、カンボジア和平の実現、旧ユーゴ内戦の終結調停、アフガニスタンの復興等、現在処理中の各民族間の紛争調停を、国連の主導の下にぜひ成功に導かなければならない。この中、最も悲惨を極めているのは、旧ユーゴ内のボスニア、ヘルツェゴビナであらう。民族浄化の全他民族を武力で追い立てるセルビアに対し、国連は凡ゆる調停努力を試みているが、事態は益々深刻の度を加えて来ている。世論は猶根気強い説得の持続を望んでいるが、恐らく強行手段止むなしの世論が出る頃にはもはや手遅れであらう。そして国連は再び無力を問われることになるであらう。セルビアは最早、感情が完全に理性を上廻り、彼等自身ではコントロールが効かなくなっている。しかし彼等とて人間の理性や平和への渇望は十分に持っている。強制介入に対して一時的に反発する事があっても、それしかなかったと目の覚める時が来るものと思う。民族の対立に対しては百点満点の対処は出来ない。例え六十点であっても、四十点の現状維持よりはましである。国連は確固たる信念の下、断固たる処置を取らざるを得ない時があると知るべきである。一方中東も燻り続けている。フセインの横暴に対しては、米国主導の下国連の介入による湾岸戦争で鉄杭を下した。しかし戦争の後処理が半端に過ぎた嫌いがある。米国は後処理をイラク国民に委ね、フセイン体制の崩壊を期待したのであらうが、フセインの主導体制は健全の儘残った。これは恐らくイラク国民にとっても不幸な事態であらう。この儘ではイラクは何時も世界から取り残され外ない。中東の難しさは、宗教にからむ長年の民族間の怨念と、他を容認しない自尊心と、此処が石油の寳庫で利権のからみが大きいことである。この地域の人々に平和と休息を与えるにはユーゴと同様、誠意や努力だけでは不可能である。国連強化に今一つ重要なのはマスコミの活用である。世界は今極端に狭くなっているが、にも拘らず私達が日々知らされている情報は、例えばアフリカの餓死とか東方諸国やペルーの混乱とか、トピック的に知るだけで七十五日も過ぎない中に、もう外の事に心が移っ96