ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
90/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている90ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

ながり、軍縮問題のみならず国連の武力不行使原則を根底から揺さぶりかねない問題である12。最近の兵器の高性能化は、まさに兵器取引が世界に戦争の種をまくものとなっているといっても過言ではない。湾岸戦争におけるイラク軍はこの事実を立証するものであったといえる。このような現状を憂慮し、わが国は1991年5月の国連軍縮京都会議で通常兵器国際移転登録制度を提唱したが、この制度は同年12月の国連総会で採択され、今年1月に発足した。今後は核兵器の禁止に関する合意が一刻も早くつくられることが望まれる。3国際公益の確立と擁護相互に平等な主権国家から構成される国際社会では、従来、共通の利益とか国際社会全体に対する義務という観念は、最近まで明確にはあらわれなかった。しかし、交通通信手段の飛躍的発達による国際社会の緊密化、大量破壊兵器の登場、地球環境の悪化などは、各国の利害対立や意見の相違にもかかわらず、国際社会の一般的利益を考慮し、それを擁護しなければ、人類の将来は決して明るくないことを示している。そこで、何が国際社会の一般的利益、即ち国際公益かが問題となるが、抽象的には、国内法では規律できない国際的に共通の利益であるといえよう13。具体的には、1980年に国連総会で採択された「国家責任に関する条文草案」が参考となる。同草案19条3項は、国際犯罪として次の事項を掲げている。即ち、(a)国際の平和と安全維持に不可欠的な重要な義務(侵略など)の重大な違反、(b)民族自決権の擁護に不可欠的な重要な義務(力による植民地支配の確立と維持の禁止など)の重要な違反、(c)人間を守るために不可欠的な重要な義務(奴隷制、ジェノサイド、アパルトヘイト、戦争犯罪、ハイジャッキング、テロリズム、海賊行為等の禁止)の重要な違反、(d)人間環境の保護に不可欠的な重要な義務(大気や海洋の汚染)の重要な違反、などである14。国際公益の擁護には、それらを条約化し、締約国に法的遵守義務を課すことが望ましいと思われる。国連には、条約化の推進と条約への参加の確保、更には、違反に対する監視機関としての役割が期待されよう。8812島田前掲書304頁。13以上、島田前掲書11頁及び66頁。14邦訳は、島田前掲書215頁による。