ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

との批判が予想される。しかし、国家の主権を侵害するという批判については、国連の設定する国際社会の枠組みは、条約や総会決議、法原則宣言という形をとるものであり、それが直ちに諸国家を拘束する趣旨ではないし、まして反対国に制裁を加えるものでもない。ただ、世界の国の大多数で十分討議した上で設定された枠組みならば、事実上多くの国が従うことが期待できるし、説得という非強制的手段により反対国の同意をとりつけていくということも可能である。次に、国内管轄事項への不干渉という国連の基本原則に反するとの批判については、人類の平和的共存を脅かす問題はもはや国際問題であり、当該国家の自由な処理に任せるべきものではないと考える。国際社会の緊密化及び相互依存の進展により従来よりも国内管轄事項は狭まっているというのが適切な表現であろう。(5)国連に期待される今後の具体的活動人類の平和的共存を理念として掲げ、その実現のために国際社会の総合的調整機関として国連が行動する場合、その具体的活動は次の三つのカテゴリーに分けられると考える。即ち、1紛争の平和的解決と安全保障体制の強化、2人類の平和的共存の為の基本的枠組みづくり、3国際公益の確立と擁護、の三つである。以下、具体的な活動の中身を敷衍して説明する。1紛争の平和的解決と安全保障体制の強化集団安全保障体制及びPKOの問題点の検討と今後の展望については既に述べた。ここでは、現在最も大きな紛争原因たる民族問題について検討する。民族自決権は、国連憲章(1条2項)、1960年の植民地独立付与宣言、1966年の国際人権規約、1970年の友好関係宣言等にみられるように今や政治的原則から法原則、さらには実定法上の権利として確立したといえる。しかし、宗教国からの植民地独立が達成された現在、民族自決権は一国内の民族間対立による内紛で主張されることが多い。ところが、民族自決権の主体たり得る「民族」についての基準が不明確であり、また自決権の趣旨に鑑みると、他の民族や国家が、或る民族が自決権の主体かどうかを決定することは問題があるといえる。かといって、現86