ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回佳作人の衝突、ソマリア、リベリア、コンゴの内戦が端的にあらわしている。1990年代に入リガリ事務総長指導下の国連はこれらの地域に次々に平和維持活動の名のもとに人道的介入を繰り返し行い、一定の成果をあげてきたことは否定できない。しかしながら前述のルトワック論文が批判するようにこれら一連の介入は紛争の根本的解決にはいたらず、一定の局面においては対立する陣営の間に一時休戦状態を生み出す事で両者に戦力回復の猶予を与えてしまうという、むしろ紛争鎮静化に逆効果の結果をももたらしている。また難民に対する支援も計画性を持って行わないことには「恒常的難民」を増加させるという更に厄介な問題を生じさせよう(後述)。「国際社会の基本的構成単位は主権国民国家」という考えに立脚した上で、破綻国家をめぐる以上の経緯を考慮すると、国連が行わねばならないことは、対立抗争を繰り返す集団の間に介在して紛争を一時的に凍結すること(従来の平和維持活動)では不充分であり、紛争の根本的解決をめざすのであれば当該地域に安定した統治能力のある政体を形成させねばならない(国際行政)。このような安定した政体を成立させる前提としては対立する諸集団を主権国家を構成する意志を有するネーションに作り変えていかねばならない。国連、地域機構あるいは混成の国際行政団といった外部者が当該地域にこのようなネーション更にはステートを形成することは言うは易く行うは難い。しかし、破綻国家のネーションまたはステート・ビルディングが失敗した最大の原因が、新興独立国を構成する複数のエスニック集団中の多数派または主流集団が国家形成にあたって権力および国富を恣意的に使用したことに事に対する少数派または非主流集団の反発に由来することを考えると、当該地城の部外者によるネーションまたはステート・ビルディングの可能性が荒唐無稽とは言いきれない。というのは部外者は対立抗争する諸集団から距離を保った中立的立場に立てるからであり、部外者による措置は一定の説得力を持つのである。また異なるエスニック集団を融合することは至難の業ではあるが、成功例が皆無ではない。たとえばシンガポールの人口構成は華人を中心にマレー系住民、インド系住民からなるが、1965年の独立以来30余年で徐々にこれら三つのエスニック集団の統合が進み、い873