ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

3.国際行政の活動それでは次にこのような中期的国際行政が紛争地域の再建にあたり具体的に行うべきことについてみていくこととする。第一は破綻国家に代わる責任ある政治的主体の再建または確立、第二は紛争地域および周辺諸国をも対象にした住民の移動・交換、そして第三に難民間題への慎重な対処、である。1)国際行政下におけるネーションおよびステート・ビルディングこれは国際行政下に置かれた紛争地域において、管理者主導によるネーションまたはステート(あるいは両方同時平行で)形成の促進である。かって1950-60年代に非植民地化の過程で新興諸国の政府が上から行おうとしたことを国際行政下において進めるのである。これら新興諸国とりわけサブサハラのアフリカ諸国の多くは健全な発展を遂げることができず、多くの破綻国家を生み出してしまった。その理由のひとつにはこれらの国々が東西冷戦に巻き込まれ超大国のコマとして熱戦を戦わされたこともあるが、何よりも根本的な原因は新興諸国の政府が安定したネーションおよびそれに基盤を持つステートの形成に失敗したことにある。植民地統治または委任・信託統治下にあった地域では非植民地化にさきだって独立後の権力委譲の受け皿となるべき政体の設立が行われた。しかしながらこれらの政体の設立にあたり植民地宗主国の都合が優先され、当該地域のエスニック集団の構成、資源の分布、住民の政治意識などに充分な考慮が払われたとはいいがたい。今日からふりかえれば「民族自決・非植民地化」の熱気の中で短兵急な独立の付与が行われた結果、独立後の国家の権力配分は異なるエスニック集団の間できわめて不均衡なものとなり、選挙と代議政治によって政策論争を行うという立憲政治意識の定着が住民の間で充分ではなかったこととあいまって、エスニック集団間の対立は往々にして武力衝突へと発展した。多数派集団による少数派集団への迫害、少数派集団による多数派集団への報復テロ、政治的混乱にともなう大量の難民の発生、混乱の周辺地域への波及による内紛・内戦の地域紛争への拡大という悪循環が繰り返されてきたのである。冷戦終結後の1990年代に入ってもこのパターンが繰り返されていることはルアンダ・ウルンディにおけるツチ人とフツ872