ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回佳作おいて計上されていたこと、などは委任・信託統治の利点として挙げられよう。これに比較するとカンボジア、コソボ、そして東ティモールの暫定統治はあくまでも一時的非常措置の性格を免れず、そもそもかって委任・信託統治を担当していた常設委任統治委員会(連盟)または信託統治理事会(国連)のような常設の機関がいまや存在しないのである。この点で現在の暫定統治を支援する体制はかってに較べ十全とは言い難い。そこで、もし紛争原因を根本的に除去し、破綻国家を立て直すことを暫定統治がめざすのであれば、状況によっては当該地域の行政を「暫定」から「中長期的」なものに強化することが必要であろう。そのためには紛争地域の行政をアドホックなものとしてではなくパーマネントなものと位置付け、国連内に信託統治理事会を復活するか、あるいはそれに相当する常設の担当機関を設置する。国際行政を執行する主体は、かっての委任・信託統治制度の時代のように単一国であることが説明責任accountabilityの観点からは望ましい。しかし前述の帝国主義的要素への批判を避ける点から、また国際社会の総意を代行して任務を遂行するという原理を貫徹する観点から、更には国際行政に伴う経済的・物的負担を分散するという観点からも国際行政の主体は紛争地域にもっとも強く関与する地域機構または個別に編成される複数国からなる行政団であることが妥当であろう。たとえば今後コソボの統治がしばらく続くとすれば行政はEUとNATOが共同して行うのが自然であり、東ティモールについては本来であればオーストラリアが主役を演じるのではなく、ASEANが中心的役割を果たすべきであった。同様にアフリカにおける紛争にはアフリカ統一機構OAUがより積極的に対処していくべきであろう。特定の地域機構によらない混成の国際行政団を編成する場合にはカンボジアにおけるUNTACが良いモデル・ケースとなる。UNTACは暫定的措置としては成功したが、より深刻な地域紛争に中長期的に対処していくためには、また予算の計上、必要な専門家の養成、情報の蓄積の観点からも、これらの国際行政の主体を統括支援する国連の常設機関が不可欠である。871