ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作う。そして、国際の平和と安全維持という国連の理念も、究極的には人類全体の平和的な共存を意味することに異論はあるまい。とするならば、国家間の関係か否かにかかわらず、人類の生存を脅かす原因となる事実を直接的に国連が取り上げて処理していくことが必要ではないか。国際社会の緊密化及び相互依存の状況をも考え併せると、人類の平和的共存のためには、単に紛争の平和的処理と安全保障のみならず、地球という環境と有限な資源を共同で利用しながら生活していく枠組みの設定とその維持という巨視的視点が重要であると考える。そこで、今後のあるべき国連の理念は、国際の平和と安全維持という理念をより実質化させた「人類の平和的共存」を掲げるべきであろう。そして国連の果たす役割は、安全保障を含め、国際社会の総合的調整機関としての国連という捉え方が大事であると思う。なぜなら、国際社会の緊密化と相互依存という状況下で人類の平和的共存を図っていくためには、国家の国内管轄事項を除いた部分を補完的に国連が処理するという発想では不十分であり、積極的な利害調整を行っていくことが望まれるからである。主権国家が併存する分権的な国際社会において、紛争の平和的解決と集団安全保障体制が重要な平和維持の手段であることに代わりはないとしても、より巨視的に、人類の平和的共存のために必要な国際社会の基本的枠組みを設定し、それを国際公益として擁護していくという対応が現在求められていると思う。178の加盟国をもつ国連以外にこの役割を担い得る一般的国際機構は存在しない。基本的枠組みの設定が早急に求められる問題として環境問題があるが、他にも、深海底資源、宇宙開発など基本的枠組み時代を如何なる理想に基づき設定するかについて国際社会で対立が激しかった問題は多い。また、国際平和と安全についても、ファシズムの苦い経験から、人権保障のないところに平和と安全は存在しないことは国際社会の共通認識となっているが、この観点からは、一国内の民族紛争や人権抑圧なども国内問題として放置するのは適当ではなかろう。国連がしばしば国際的関心事項という名のもとに従来国内問題と考えられてきた問題に介入するのは、人類の平和的共存という見地からはむしろ好ましい行動といえる。しかし、上述のような国連の在り方は、諸国の主権を侵害し、国内管轄事項への不干渉という国連の基本原則(2条7項)に反する85