ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

もとより西欧諸国では紛争処理にあたり、聖アウグスティヌスの時代からキリスト教の教義の下、いかなる条件下で武力行使が正当化されうるか、いわば正戦論の理論的基礎が徐々に形成されてきた。正戦論は「倫理的な基準」として20世紀初頭にほぼ確立され、血生臭い植民地主義時代や二度に渡る凄惨な世界大戦の洗礼を受けた後、やがて国際法体系として昇華されていった。正戦論に基づく武力行使は下記の諸条件を満たす必要があるとされる。1021.開戦理由が正義に基づくこと。2.正統な機関決定に基づくこと。3.正当な意図があること。4.最後の手段であること。5.武力行使の結果、新たな平和が創出されること。6.目的と手段が釣り合っていること。7.戦闘員と非戦闘員が区別されていること。8.成功の見込みが高いこと。国連による平和関連活動も、墓本的にはこの正戦論の枠組みに依拠して発展してきた。現在、深刻な人権侵害が行われている国内紛争に国際社会がどのような条件下でどの程度まで介入できるかを巡って議論が繰り広げられているが、この人権と国家主権のバランスに関する議論も、基本的にはこの正戦論の応用形として新たな国際規範を模索している側面が強い。この議論の根底にある問題は、国益や価値観を巡る安保常任理事国間での相克である。いつの日か国際社会は、正戦論の概念をさらに深化させ、紛争介入を巡る国際的規範について合意できるのだろうか?近年、国際関係論の領域において、構成主義学派が台頭してきている。従来、リアリズムもリベラリズムも「国益」や「脅威」を所与のものとして取り扱ってきたが、これに対して構成主義学派は、「国益」や「脅威」の概念が一国の中で形成されてゆくプロセスに846102 Michael Waltzer,“Just and Unjust War”