ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

献するものである。スエズ国連緊急軍(UNEF)に始まり、最近では日本のPKO協力法案の議論に関しカンボジアでの活動が記憶に新しい。現地に派遣されるいわゆる国連平和維持軍の特徴としては、1非強制的性格(受け入れ国の同意に基づく派遣)、2中立的性格(部隊は大国や利害関係国を除いた中小国を中心に編成され、紛争当事国には公正な態度で臨み、かつ受け入れ国の内政に干渉しない)、3国際的性格(国連の一機関として上位機関の直接の統制下におかれる)の三つが挙げられる7。この特徴は、PKOの限界とも裏腹の関係にある8。即ち、受け入れ国の同意なくしては派遣自体が不可能であり、軍隊提供の面で加盟国の積極的参加を確保する必要があること、更に、財政面での加盟国の支持も不可欠であろう。また、未解決の問題点として、1国連憲章上の位置づけ、2発議・監督機関としての安保理と総会との権限の分配、3事務総長の役割、4経費分担等が指摘される。しかし、PKOを過大評価してはならないことを最後に注意したい9。確かに、PKOは平和維持という国連の理念に忠実かつ有用であるが、集団安全保障体制に代わり得るものとまではいえない。その機能は国連軍による応急的な「火消し役」にすぎないのである。真の平和の実現には戦火の原因である政治的紛争そのものを解決する必要があり、この解決の努力を怠ればPKOは徒に不安定な情勢を恒常化するだけである。1974年以来のゴラン高原における国連兵力引離し監視軍(UNDOF)や1978年以来の南レバノンにおけるレバノン国連暫定軍(UNIFIL)の事例は貴重な教訓であろう。PKOと同時に紛争の根を断つための平和的解決手続の強化が平行することが必要であるが、それには国連事務総長の役割に期待したい。事務総長の国連憲章に定められた紛争解決機能は、国際平和と安全維持の脅威となる事項について安全理の注意を促すことだけである(99条)。しかし、事務総長には中立的立場に立つ国の出身者が多く、かつ外交面で経験豊富な尊敬に値する人物が選出されるので、国際紛争の調停者としては適任だといえるからである10。国連の権威を背景に事務総長が積極的に調停・仲裁活動を行うことは、PKOをより実り多きものにすると信ずる。冷戦後の現在も国際社会には紛争は絶えず、また、紛争に至らずともそのおそれのある827香西茂「国連軍と平和維持活動」田畑・石本編・国際法「第二版」291頁(昭和58)有信堂。8前掲・国際法概説268頁。9以下、前掲・国際法概説268-9頁。10島田征夫・国際法概説262頁(平成4年)弘文堂。