ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回優秀賞件が一つでも発生すれば、介入国はすぐに撤退してしまう傾向が強くなった。介入側が犠牲者を出すことにあまりにも敏感になったため、反抗的な勢力はあえてそのような事態の発生を画策するケースさえ見られる。39このため、平和維持活動がさらに犠牲者を生み出すという悪循環が生じがちである。40ある国が国連の軍事活動に参加するにあたっては、その活動が国益と密接に関連していることを、その国民が十分に理解しておくことが極めて重要といえよう。また、逆に、紛争とは直接関係もない安保理常任理事国の都合が、紛争介入を妨げる契機となるケースも見受けられる。例えば中国は、ハイチ、グアテマラ、マケドニアでの小規模な平和維持活動の実施を阻んでいるが、これはこうした諸国が台湾と関係を持っているという理由に基づく一種の恫喝策である。41あるいは、コソボ紛争にあたって、アメリカは最適の介入機会を98年末頃に見逃している。当時、クリントン大統領はスキャンダルのために弾劾の瀬戸際に立たされて全く動きが取れず、また唯一の交渉人であったリチャード・ホルブルック大使も自らの権限乱用に関する疑惑解消のため、議会公聴会に多くの時間を割かねばならなかった。こうした国内事情のため、アメリカはコソボ紛争防止のための調停努力を十分に果たせなかった。第三に、平和関連活動にあたって国連がとったアプローチにも問題があった。42 90年代半ば以降、国連の平和関連活動では平和維持活動に他の平和関連機能が結合する「複合的アプローチ」が支配的になった。予防外交、平和維持活動、平和再建が結合した活動は、これまでのところ概ね成功を収めてきたのに対して、平和維持活動に強制権限が付与された活動は、概ね失敗するか大きな困難に直面してきたといえる。43もとより平和維持活動は、中立にして非強制的な活動で、そのような性格がこの活動の力と権限の源であり、これまでの成功に結びついてきた。44他方、平和強制は、平和を乱す者に強制的な制裁を与える活動であり、平和維持活動とは対照的である。両者は本質的に相容れないものであって、これらを結合させて単一の活動に統合することにはもともと無理がある。このような失敗を繰り返さないためにも、国連はこれら二種類の平和活動を明確に分離するべきであ39ウィリアム・ダーチ、p.17940ウィリアム・ダーチ、p.17341リチャード・バトラー、p.14442浅田正彦、p.7443浅田正彦、p.7444浅田正彦、p.74837