ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

が世界中の様々な地域紛争に対して維持するのは不可能とさえ言えよう。32長期的視点に立てば、国際平和と安全の確保のためには、まず何よりも唯一の世界機構としての国連への信頼回復とその正統性維持が不可欠である。33このためには、数多くの成功を求めて大きな失敗を繰り返すよりも、数少なくとも確実に成功を治める方が良いのは自明であろう。介入によって事態が悪化する可能性があれば、むしろ何もしないほうがよい。34介入の判断にあたっては、成功の見込みが高いことが絶対条件の一つとして考慮されるべきである。これは決して国連消極主義の提唱ではない。国連の機能は、紛争予防や紛争後の復興段階など、国際社会に資源協力を求め、幅広いコンセンサスに基づいて事態を処理する局面に最も適している。35自らの能力と限界、そして紛争当事者の能力と意思を判断した上で、様々な紛争に対し選択的に介入することこそが国連にとって現実的なアプローチと思われる。36紛争処理失敗の要因これまでの国連による紛争処理の失敗原因としていくつかの理由が挙げられる。836まず第一に、危機に際して事態を分析し適切な戦略を立てる時間も労力もないままに、数多くのPKO派遣要請に直ちに対応しなければならなかった点が挙げられる。37ただでさえ脆弱な紛争予防機能に加え、オーバー・コミットメントのため、財政危機が深刻化し、要員不足・装備不足や事務局の混乱等の問題が拍車をかけてしまった。38紛争発生前の早期警報が十分に機能せず、後追いで事態への対処を迫られた結果でもある。もとより、紛争が発生してから対応するのでは遅すぎる。紛争を初期段階で未然に防ぐことが肝要である。第二に、国連が有効に地域紛争に介入できるのは、安保理事国や平和部隊派遣国の国益と紛争との関連が明確な場合に限定されている場合が多い。例えば、東チモール独立を巡る紛争への介入が比較的効果的に進んでいる背景には、インドネシアに重要な国益を抱えている隣国オーストラリアが重要な役割を果たしている点が大きい。逆に、紛争における介入国の国益が不明確な場合には、活動中に犠牲者を出す残酷な事32エドワード・ラック、p.11633浅田正彦、p.7334浅田正彦、p.7335岩間陽子、p.1636浅田正彦、p.7337浅田正彦、p.7238浅田正彦、p.73