ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
830/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている830ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

プローチ」にも問題があった。国連には軍事的強制措置発動に向けた確固とした決意と能力が不十分である。さらに、国家主権とのからみで国際社会がどこまで国内紛争に介入できるのか合意がなく、紛争介入基準が存在しない。平和活動参加国においては、紛争処理と国益との関係が不明確な場合、活動中に犠牲者が発生した時点ですぐに撤退の道を模索する傾向も強くなった。以上の諸問題を考慮した場合、紛争は発生してから対応したのでは遅すぎる点が指摘できる。国連によるあらゆる平和関連活動の中で、何よりもまず予防外交の重要性が注目されるべきであり、このために早期警報機能を早急に強化しなければならない。タイムリーな早期警報を適切なタイミングで適切な相手に与えれば、国連は紛争の平和解決に向けた調停者の役割を果たすことができよう。早期警報システムの管理運用上の問題点を早急に改善しなければならない。さらに、平和維持活動等が選択的に発動される場合でも、国連事務局の支援能力を強化する必要がある。平和維持活動局の権限強化、計画・予算の作成プロセスの改善、平和維持訓練の強化等が求められる。国連開発計画を通じた援助等、社会・経済政策的アプローチを通じて信頼醸成や紛争予防を継続することも地道ながら重要な作業である。今後、国連は様々な地域組織や同盟関係等との相互補完体制を強化して、多層的な紛争処理メカニズムの構築を目指すべきである。地域組織の紛争処理機能強化を促し、国連安全保障理事会は監督的機能を強化すべきである。また、早期警報や紛争解決の分野においては優れた技能と経験を蓄積したNGOとの連携を深め、政府代表、NGO、研究機関、シンクタンク等、様々な組織との間に非公式な平和連合ネットワークを構築するべきである。国連の紛争処理機能は、関係諸国が抱く異なった国益観や、人権・国家主権といった社会の基本理念に関する異なった価値観の狭間で、綱渡りのように非常に微妙なバランスを保ちながら徐々に発展してきた。現在、冷戦終了後の過渡期において、新たなグローバル・ガバナンスの仕組みはまだ見えない。他方、相変わらず世界各地で地域紛争が発生し、国連の存在意義が一層問われる828