ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
780/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている780ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

メリカを取り上げる理由は、加盟国の集まりである国連において、一国が財政的にも政治的決定にも大きく影響しうる状況について考察するためである。アメリカは、拠出金の分担率が第1位であるが、同時に国連の政策においてアメリカがもつ影響力も大きくなっており、それは紛争解決の分野においても同様であるといえるだろう。こうした状況の中、例えばソマリアに関しては、アメリカの介入目的が真に人道的な見地からのものだったのかという点や、UNITAFにおける国連側(具体的にはガリ事務総長)との意見の対立、UNOSOMⅡの活動におけるアメリカの中心的役割が指摘されていることは先に述べた。また、アメリカの撤退決定は、その後の国連のソマリア介入に大きな影響を及ぼした(64)。さらに、安保理の決定がない中での、アメリカやイギリスによる軍事行動をめぐる指摘もある(65)。これらは、紛争解決において国連が大国に依存せざるを得ない状況と、その一方で、一国が大きな主導権を持った場合、国連や、特に「人道的介入」という目的が自国の政策実行において利用され得る危険性や、一国が実際の任務において大きな影響力を持つことは、国連と加盟国との関係に関する問題を提起している。第2の問題点は、加盟国がどういう紛争にどの程度介入するかを決める基準として自国の利益を用いる傾向である。現実的にいえば、自国の利益に見合うと思えない事案に、各加盟国が深く介入する、あるいは、全ての紛争にあらゆる加盟国が介入するとは考えにくい。しかも、主に「伝統的PKO」において積極的に参加している北欧諸国やカナダなどの例がある一方で、各国はソマリアなどの失敗以降、紛争に関する国連の活動に冷戦終結直後のようには積極的にならなくなっているとされている。このように、紛争が多発する一方で国連にも限界があるという状況の下では、先に述べたような任務の吟味が不可欠と考えられる。一方で、介入する事案を選択するべきであるという議論は、その選択をいかなる基準に基づいて行うのかという問題が残っているといえる。国連と加盟国の関係に関する第3の問題点は、特にPKOなどの任務を実施する際の、国連の統制・調整能力である。冷戦期には、紛争への東西対立の関与を防ぐため、五大国はあまりPKOに参加してこなかったが、今日ではその制約は薄れ、むしろ活動の中心と778