ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回最優秀賞第4点は、UNOSOMⅡ派遣に至るまで、ついにソマリア内戦の最も重要な問題点である武装解除が行われなかった点である。ソマリアでは、大量に存在していた武器の存在は内戦を長期化させる一因となっており、また武装集団による略奪がソマリアの人道的支援活動を困難にしていたため、飢餓などの人道的危機が、強制力を持つUNITAFが派遣されるまで改善されなかった。さらに、停戦を維持し、紛争の平和的解決を模索するためには武装解除が行われることが重要となる。しかし、「伝統的PKO」のUNOSOMⅠでは任務とされず、UNITAFではアメリカの意向で任務が限定されたため、武装解除はUNOSOMⅡの任務となった。一方、武装解除が平和裡に行われるには、確固とした停戦と、紛争当事者の協力、そして武装解除を行う側に対する信頼が不可欠である。しかし一方で、UNITAF介入後のアディス・アベバ合意における停戦は、UNITAFの武力という無言の抑止力によってもたらされたという指摘があり(33)、また、国連の公正性に対する疑問があったことは既に述べた。従って、UNITAFまでの過程で、武装解除、又は武装解除を行い得る環境創成を達成したとはいい難く、後に、UNOSOMⅡは適さない状況の中で武装解除を行うことになった。UNOSOMⅡの分析上述の問題点を抱えつつソマリアに派遣されたUNOSOMⅡ自身に関して、中心となる問題点は主に以下の2点と考えられる。まず、UNOSOMⅡは、その活動任務が非常に広範囲であったという点である。その任務は、「伝統的PKO」に見られる停戦監視から、人道的支援活動の保護、ソマリアのインフラ再建や警察・行政の再建、難民の帰還支援や武装解除に至るまで、それまでほとんど例を見ない広範囲なものとなった(34)。さらに、それらの任務遂行のため、平和強制機能が課されている。ある研究者らが指摘しているとおり、「UNOSOMⅡは、とかくその平和執行機能に注意が集中しがちであるが、このPKOは、その任務の範囲の広さ及び内政への関与の深さにおいても前代未聞であった」(35)。一方で、こうした任務はソマリア人自身の支持を得て初めて達成できるのであり、これらの任務を達成するためには、UNOSOMⅡが第三者的で中立かつ不偏な立揚を逸脱しては771