ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

を課したことである。UNOSOMⅠ設立時に一度成立した停戦が破られ、戦闘・略奪が再発していたソマリアの状況の中で、「伝統的PKO」であるUNOSOMⅠがそのような任務を遂行することが困難であるということは、数ヶ月後に、UNOSOMⅠでは対応できないという理由でUNITAFを人道的支援活動の保護のために設立・派遣したことによって明らかであるといえる(28)。UNOSOMⅠ設立を決定した安保理決議751などにおいて、内戦及びそれによる人道的危機がソマリアを不安定にしていたと考えられていたこと(29)、人道的支援活動の保護という任務にも、UNOSOMⅠ設立当初はアイディード将軍、アリ・マハディ氏が同意していたこと(30)から考えると、人道的支援活動の保護は、「伝統的PKO」ではみられなかったものの、一見UNOSOMⅠの任務として矛盾は生じないように思われる。だが、当時のソマリアにおいては人道的支援物資が略奪の対象になる危険があり、そういった危険があることも国連によるソマリアへの本格的介入の動機の一つであったはずである。よって、停戦が成立したとはいえ、内戦という状況の中で、自衛以外の武力不行使の原則に基づく「伝統的PKO」として設立されたUNOSOMⅠが、略奪の対象となっていた人道的支援活動の保護にあたることが現実にはどれほど危険であるか、またUNOSOMⅠがその状況に十分対応できるかという点について、十分に検討されていたかという点で疑問が残る。第3点は、憲章第7章に基づく多国籍軍としてUNITAFを派遣するにあたっての意見の対立である。安保理内をはじめ、国連とNGOとの間、ソマリアの紛争当事者の間など、様々な方面でUNITAFを巡る意見の対立があったと指摘されている(31)。特に、UNITAFの任務に武装解除を盛り込むか否か、UNITAFの派遣期間をどの程度にするかといった点を巡るアメリカとガリ事務総長との間の意見の対立は、UNITAFの実効性を弱めるだけでなく、紛争当事者にUNITAFが示す武力を伴った抑止力は一時的なものであるという認識を与えた(32)。同時に、この意見の対立は、元来加盟国の意思に依存する国連の政策が、アメリカという一国に頼らざるを得ない国連の現状を明らかにすると共に、その一国の政策に国連が左右されるという危険性をも明らかにした。770