ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回最優秀賞示している。紛争への介入においては緊急な対応を迫られることと、一方でその紛争に適した介入を行うということとのジレンマの中では、先に述べた紛争及び人道的危機の深刻化以前からの情報収集が求められる。また、いかなる紛争に介入する際にも、その紛争の背景や当事国の特徴を把握することは重要だが、民族紛争をはじめとする内戦においては、その背景や状況が特に複雑でありがちなため不可欠である。なぜなら、十分な分析は、その紛争の根本的問題は何か、今状況はどうなっているのか、そのために国連はどういう介入ができるのか、さらにはどこまでが国連の介入可能な範囲で、どこが国連の限界なのかを結果的には最も適切かつ迅速に把握する足がかりとなるからである。UNOSOMⅡ以前の国連の活動の分析筆者は、UNOSOMⅡが派遣される前の国連の活動の中に、UNOSOMⅡの失敗に繋がる問題点が存在していると考える。それは主に以下の4点である。第1点は、UNOSOMⅠ、UNITAFの活動中から、既に国連の公正性に疑問を感じたり、明らかに国連を敵と見なしたりする動きがあった点である。例えば、アイディード将軍派はUNOSOMⅠがアリ・マハディ派に有利な活動をしていると判断すると共に、国連の介入に好意的なアリ・マハディ氏が国際的に承認されるのを恐れて、UNOSOMⅠへの反感を強めていった(26)また、各紛争当事者の間を回り、ソマリアの伝統的な話し合いに基づく解決を模索していたサヌーン特使が辞任してからは、ソマリアの地方の派閥指導者達の間では、国連は協力という方針を捨ててソマリアを「侵略」することを計画しているという見方が広まり、従って国連は彼らにとって「共通の敵」であるという認識が広まっていた(27)。国連がソマリアの紛争当事者と敵対し、まさに内戦の一紛争当事者となるに至るのはUNOSOMⅡにおいてだが、それ以前に国連がこのような認識をされていたことから考えると、既に国連が紛争当事者となる危険性が存在していたといえる。紛争当事者から第3者である国連の公正性が疑われることは、紛争の平和的解決を困難にすると共に、要員や国連関係者、現地で活動するNGO関係者の安全確保をも困難にする危険性がある。第2点は、「伝統的PKO」であるUNOSOMⅠに、人道的支援活動の保護という任務769