ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

よる援助はソマリアの食糧危機を改善したこと、また1991年当時は、中央政府が崩壊した内戦という状況下において国連機関がどのように活動すべきかについて模索中であったことを念頭に置く必要があるが、民族問題をはじめとする紛争が多発し、しかもそれらの多くが内戦という形を取っている今日の状況では、各地の紛争の原因となり得る要素を早期に把握しておくことが必要となる。また、早期から国連が人道面などで関わりを持っておくことで、不安定要素が実際に内戦へと発展し国連が介入した際に、紛争当事者の警戒感が軽減される可能性もある。従って、特に紛争に発展しそうな兆候がみられる、もしくはそのような情報を得た国や地域では、例えば食料援助や様々な社会問題への支援を通じて前から関わっておく必要があるといえる。指摘すべき第2点は、国連のソマリア介入が、十分なソマリア分析に基づいていたかという点である。ソマリア内戦は、民族的特徴、歴史的経緯、経済的状況などの要因が大きく影響している。例えば、ソマリア人の政治・生活などあらゆる側面を支配している氏族制や、ソマリアの人々が元来外部の人間の干渉を嫌い、長老を頂点とした伝統的な氏族制に基づく仲裁を行ってきたことなどは、ソマリアに介入する上では十分に把握すべきことである。また、識字率が低く、主な情報収集にラジオなどが用いられており、内戦時には指導者がプロパガンダをしやすいという状況もあった。歴史的には、紅海や中東に近いという立地条件から、帝国主義時代には列強の植民地に、冷戦期には米ソ対立の舞台となった経緯を持ち、また、今日紛争当事者の一人となっているアイディード将軍は、ソマリア人にとっては独裁者バレ大統領追放の立役者である。そして経済面においては、先に述べた1980年代の大量の援助や、世銀・IMFによる構造調整計画によって農業・牧畜産業従事者-これは国民の大部分が当てはまるが-が影響を受けているという指摘もある(25)。これらの要素からは、ソマリア人の外部からの介入に対する警戒感や、国際的には非常に風当たりの強かったアイディード氏が、国内において必ずしも同様に認識されていたとは限らないということを予測できる。また、先に挙げた冷戦時代からの大量の武器の存在は、実際の国連による活動ではUNOSOMⅡまで行われなかった武装解除の必要性を顕著に768