ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

の武器が残されていたことが内戦の継続を可能にし、治安の悪化の一因となった(12)。この内戦状態が、干ばつと経済崩壊のために1980年代から続いていた飢餓をさらに増進させ、ソマリアは飢餓、違法徴兵などの人権侵害、市民からの物資の略奪や難民の大量発生といった深刻な人道的危機に陥ったのである(13)。国連の介入目的・方法の妥当性まず、国連がソマリアに介入した目的と、その方法全般に関して考察したい。ソマリアに国連が介入するに至った目的は、筆者が考えるところでは大きく分けて2つある。第1は内戦による人道的危機の改善と、人道的支援活動のための安全確保である。人道的危機に対しては、国連の関係機関やNGO(14)が人道的支援活動を行っていたが(15)、内戦によってインフラが機能せず、また支援物資が武装勢力の略奪の対象となるなど、困難な状況となったため、国連は本格的介入に乗り出した。まず、平和創成(peace-making)(16)と平行して、安全保障理事会(以下安保理)の決議733に基づく武器禁輸措置、そして紛争当事者の停戦合意に基づく「伝統的PKO」であるUNOSOMⅠ派遣という対策をとった。しかしどちらも効果を発揮しなかったため、人道的支援活動の保護を目的として、多国籍軍であるUNITAFを派遣するという方法をとった。この中で、国連のソマリア介入当初から、ソマリアの人道的危機は、国連憲章のいう「国際の平和と安全に対する脅威」となる危険性が安保理決議中で認定され(17)、それはUNITAF派遣を決定した安保理決議794において明記されるに至った(18)。また、UNOSOMⅠは、支援物資が略奪の対象となる内戦という状況下では、たとえ国連という第3者であっても安全・公正に活動することが困難であるということを証明する形となった。さらに、一連の人道的危機改善の試みが全面的には成功しなかったことは、根本的原因である内戦を解決しない限り、人道的危機もまた改善されないということを明らかにした。実際、UNOSOMⅡが撤退した後のソマリアは、国連が介入する以前と比べると改善したものの(19)、無政府状態の中、依然として人道的危機が伝えられている(20)。766