ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回佳作ことはできるだけそれに依存しなければならない。例えば、解決策の研究や、実施は従来の国家の枠組みの中でもできるので各国の研究機関や政府機関、NGOなどに依存すべきである。だがこれらの機関間の調整や(先に挙げた)問題解決の優先順位の設定は国連のみが果たしうる役割である。3.3.南北対話の場としてもっとも、環境問題や人口問題は南北問題が絡むゆえに、簡単な「問題-解決」の図式では捉えることができないのも事実である。確かに、70年代に見られたような厳しい南北対立は鳴りを潜めつつあり、リオ会議などによって環境問題には南北間の真剣な対話が不可欠であることが認識されるようになってはいる。しかし、いまだに南北間の溝は大きい。経済的グローバリゼーションの浸透によりむしろ南北間の経済格差は広がっている。そこで、南北問題の解決のために、地球規模での所得の再分配をどのように行っていくのかを真剣に考えなければならない。そのためには「北」側の国の人の間で世界的な所得の再分配の必要性が認識される必要がある。ここには大きな困難がある。それは「南」の国の人々がどれほど貧しかろうとも、限りある自分の財産を削ってまで彼らを救済しなければいけないという意識が乏しいという点である。経済的自由主義が信奉される中で、福祉国家的政策が批判されつつあり、こうした傾向はますます強まるだろう。途上国側の国内の所得格差も増大している中、国単位の援助は次第に意味を失いつつある。南北問題の根本的解決は、世界規模での(国単位ではなく)個人レベルの所得の再分配制度と、機会均等の確立のほかには有り得ない。しかし、上で挙げた大きな問題がある現状ではその実行は難しいだろう。それまでの南北問題の管理は、暫定的ながら、これまでと同様「北」側の国々の中で「国税」として微収された税金の一部を援助として送られるものと、財団やNGOなどによって自発的に提供されるものの、の二つによって維持し続けていかざるをえない。国連(特に援助機関)は、もちろん今後とも援助に対する研究も進め、より効果的な開749