ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

よって確保することはできない。自国の安全は、もはや隔離されたあるいは保障された安全地帯といった形では存在し得ない。一国の安全保障は国際的安全保障の中に組み込まれており、一国を基礎とした決定はますますその意義を失いつつあるといえるのである(8)。3.グローバリゼーションと国連の役割本章では前章で取り上げたグローバリゼーションの諸側面とそこから生じる問題点に対して、国連が果たすべき役割を指摘していく。「国連の果たすべき役割」と銘打つにあたって、国連が国際政治において能動的なアクター(行為者)として定義可能かという問題に直面する。そこで、一応の目安として国連の定義を「国連憲章で設立された主要機関」と「憲章内で主要機関が設立した補助機開」の両者とした。また加盟国の働きかけによるもの、事務局内の動きによるものの区別を問わず、国連機関を利用して行われる諸活動を国連が能動的に行動している(しうる)かのように記述した。さて、どんな機構の問題に関しても言えることであるが、ことに国連の役割に対して提言する場合、抽象的な理念ばかりか、又は(安保理議席拡大等のように)あまりにも具体的な制度面での改革案ばかりが先行するように見受けられる。しかしここではグローバリゼーションの流れの中で、これまで国連がどのような役割を果たしてきたか、そしてこれからはどのような役割を果たしうるかについて、現実的でかつ根本的な問題を扱うことにしたい。そこで制度面での改革についてはあまり取り扱わないことにする。3.1.経済的グローバリゼーションと国連経済面でのグローバリゼーションのうち、市場(貿易、金融)のグローバル化の側面については、国連が世界経済の中で果たす新たな役割は、今のところ余りないであろう。確かに、国連の専門機関の中では、国際商取引規則の設定、様々な経済セクターの動向に関する情報の収集、開発問題の研究、国際貿易の促進などの活動を行っている。しかし、金利の変動、通貨危機、市場占有率などの大きな問題に関して、国連専門機関その他の国際機溝が果たしうる役割は限られており、今後もこの状況はあまり変わらない746