ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回佳作教育・保健施設の増設、住宅・エネルギーの提供、雇用の創出等に多額の支出を迫られることとなる上に、環境破壊、人口の都市化、人口移動の健在化が加速してくる。2.5.ヒトの移動現状では依然パスポート制が存在し、制度の上では完全な人の移動の自由は達成されていないが、旅行手段の高速化などにより質的にはヒトの移動が地球規模で行われるようになっている。ヒトの地球規模での移動は多国籍企業や国際NGOを登場させ、国際社会において発言力を強めつつある。こうした利点の一方、負の側面も指摘することができる。モノ、カネ、ヒト、情報が自由に国境を越えるようになると、悪いモノ、ヒトも自由に世界を動きまわるようになる。テロ、麻薬取引の拡大、武器密輸、ハイテク犯罪、こうした犯罪組織によるマネー・ロンダリング(資金洗浄)、さらにはエイズなどの感染症が、市民の生命や財産を脅かしつつある。まだ、ヒトの移動は労働問題、移民問題を引き起こし、ナショナリスティックな反発を引き起こす。さらに、文化摩擦の増大も懸念される。概論でも指摘したとおり、文化はその土地に固定的であり、極めて「領土性」が強い。それまで平衡状態になっている文化に異質なものが侵入する際には抵抗を引き起こす。情報・技術が地球規模で交換される中で、こうした抵抗が日常的に頻発し、「反西欧化」「反アメリカ化」的な感情が鬱積している。人種差別や偏見も市民レベルではまだ根強く残っている。2.6.主権国家の相対化ここまで議論してきたグローバリゼーションの諸側面は、国家主権を脅かすものとなりつつある。ヒト、情報の移動が地球規模化し、国際NGOなど非政府アクターが国際社会で重要な位置を占めるようになってきている。また、人権などの諸規範が世界的に共有されるようになってきており、内政不干渉の原則も相対化されつつある。安全保障の面からも脱主権とまでは言えなくとも「脱領域」という様相を指摘できる。軍事技術の高度な発達によって核兵器などの大量破壊兵器が開発され、その一方でミサイル、空母などの長距離運搬手段も存在する中で、どの一国たりともその安全を自国のみに745