ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞いう各要素にみてとることができる。これに対応し得る実質効力をもつレジームの要因として運営委員会の多数決制による裁決を決定手段とし、違反国に対しても制裁手段を持つものとする。問題は、そのような拘束力に反発する運営委員会内での求心力を何に求めるか、そして他の参加国との協調体制である。まず運営委員会での方針合意を最も困難にする要因として各国の武器輸出規制による経済的なダメージがあげられよう。特に国内の経済不安によりますます武器輸出が重姿性を帯びてきたロシア、軍需による雇用供給と貿易収支が大きい欧州軍事大国のコンセンサスを得ることは難しい。これら諸国の求心力として、近年急速な進歩を遂げているハイテク兵器の相互依存体制を醸成することを挙げる。第3章でも述べたとおり、かつては軍事目的の研究が民需技術に応用される趨勢だったが、民需市場の圧倒的な要請に応える民生技術の急激な進歩がもたらす技術応用の逆転現象、いわゆるスピン・オフからスピン・オンへの転換により軍事研究費の需要は冷戦期ほどではなくなった。しかし兵器開発・生産において競争力を持つ兵器を生産するためには、未だにある程度の数の兵器を生産して経験やノウハウを重ね、単位あたりのコストを下げなければならず(ラーニング・カーブに説明される)、ハイテク化された兵器に至っては開発・生産コストの上昇に軍需市場の伸びがフォローしきれないため、一国の軍需市場の規模がハイテク兵器の生産を支えられない事態が生じてきている。そのような技術が、開発後に先進国で独占されると前堤された場合先進国同士が共同開発する経済的動機は十分である。このような運営委員会諸国での軍事技術の共有化に最も反対が予想されるのが米国である。米国は1990年代半ばのボトムアップリビュー、QDRを経てより厳しくなった国防費予算の削減を補完するものとして軍事革命:RMAをあげており、米国技術と軍事力の優位性維持が国防上の妥協できない重要な要素となりつつある。この方針は日本に対する技術競争での警戒心やフランスに対する技術スパイ活動への懸念(1993年の航空展示に米軍機は出展を拒否)に見ることができる。米国は今後も宇宙分野、指揮・統制・通信システム、コンピュータ、諜報・監視・偵察分野での優勢維持を強めていく方針である。特715