ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞問われることとなろう。ロシアは、厳しい経済状況と西側諸国の援助に対する失望という背景において、軍民転換の資金を兵器輸出自体によってまかなおうとしている傾向が強い。武器生産の減少にともなう大量失業の可能性について、「大半を占める底辺の労働者は原材料、エネルギー部門で働いており、実際に失業するのは最終段階の武器組み立てにかかわっている少数の労働者だけである」という見る分析は少数派に過ぎなかった。現実には、軍民転換が速やかに進展しないため、軍需産業の大量の失業者が予想され、軍事技術の維持・向上のために西側に対し数少ない競争力をもっている軍事産業を失うことの警戒心も強い。また冷載崩壊においても中東、インド、中国、そして東南アジアに対する軍事戦略上の基盤を保つための兵器輸出は未だに強い外交的要素をもっている。このようにロシアの軍民転換に対する動向に対しては多数の困難が待ち構えていると言えよう。中国においては、現段階では民需転換への具体的な政策は打ち出されていないと言えよう。先にのべた経済的動機がもたらす輸出政策の無差別性が解消されない限り、中国の市場を完全に消滅させるような要因は今のところ見当たらない。つまり中国が経済的にも外交的にも多くの痛みを伴う産業界の縮小に積極的に取り組む可能性は低いと言わざるを得ない。4国連による管理体制の必要性以上に述べてきたように、冷戦後において、グローバルな通常兵器管理体制の必要性がますます増加しているにもかかわらず、武器輸出主要国や懸念地域などの様々な要因が複雑に絡み、そのような体制への効果的な取り組みはなされていない。特に近年圧倒的なシェアを占める米国は他国に規制を求める一方でその利権を念頭に置いたダブルスタンダードな政策が際立っている。ではなぜ、国連がそのようなレジームの中心として関わる必要があるのだろうか。その理由として、国連はなんといっても現在代表的な国際機関として最も多数の参加国をかかえていること、そのような場においてのレジームの生成が最も正当709