ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞際的な規制という貿易範囲の縮小によって米国との海外市場獲得争いに熾烈な闘いを強いられており、インドへのミサイル供与に対する米国の抗議、台湾やマレーシアに対するMIG29の売却問題などで米ロ間の摩擦が顕在化した。これによって「ロシアの経済混乱に乗じて西側が兵器輪出市場の進出をもくろんでいる」といった不信感が広がった。<中国の軍備輸出に関する政策>では中国の軍備輸出政策はどのようなものであったのだろうか。中国の場合においても、兵器輸出は冷戦期においてイデオロギー的要素の強いものであった。1950年代から1970年代にかけては、社会主義国や反植民地勢力地域に優先的に兵器を供給した。しかし1980年代以降は、外貨獲得のための経済的動機が強くなり、国際社会から兵器輸出を規制されている懸念国や紛争を起こしている双方への輸出といったような相手国を選ばない輸出がなされている。中国兵器の特徴は、1960年代の米ソ関係悪化に伴うソ連製兵器の入手不可能によるソ連製兵器のコピー製品を量産したことにある。そのため性質に若干の難がありながらも安価で単純であり、さらに20年の借款を行うことで特に発展途上国において人気があった。武器供給国の中でも先進国では兵器という性質上その輸出許可に対して慎重になり、実際の出荷に至るまで若干の規制手続き時間を必要とする中、議会や世論というブレーキのない中国においては一党独裁体制のため政治決断から出荷まで迅速であることが紛争当事国に歓迎されたという側面もある。このような要因を背景に、1980年代の中国はイラン・イラク戦争において双方に大量の兵器を供給し続けた。経済的な効果が期待できる一方で、兵器輸出はなお外交的な要素を持ち続けていた。なぜなら中国の貿易相手はそのほとんどが経済力や産業構造の未熟な中東や発展途上国であるため輸出後にも定期的な兵器のメンテナンスを必要とし、中国はそれらのケアや技術者の派遣と言った二次的な影響力を保つことができたからである。中国の貿易相手の多くが中東や懸念国であることからそれらの地域の不安的化につながるとの国際的な不安は強く、特に米国は再三にわたって規制するよう求めてきた。しかし中国は米ソに比べると自国の輸出割合はわずかであり、また兵器輸出は自国の主権である707