ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

洞察から、利己的欲望同士の衝突や、独占欲の肥大化などを痛いほど熟知していたに違いないのである。その欲望の闘争をホッブズのような絶対的統制システムによって解決しようとするのではなく、一般的な非恣意的な規則に則った「立法府」のような監視規制機構によって、欲望の闘争を公益に結び付けようと苦慮したのである。よって、真の自由市場主義者(反合理主義的自由主義者)は、何らかの監視規制制度を、市場主義、自由主義を真に愛するが故に求める。情報・通信の分野で顕著であるが、ルールなきメガ・コンペティションは弱肉強食の暴走した世界であり、巨大な勝者は一旦勝つと半永久的に弱者を圧迫し続け、上に君臨し、その独占からまた巨利を得るという歪な社会を生み出す。それは、将来的には、脱グローバリズム勢力群を生み出し、むしろ、誰もが自己実現の可能性をもちうるという世界規模の市場主義の真の理念は、市場主義を自称する『合理主義的自由主義』の代弁者たちの手によって、死滅させられてしまうだろう。では、いかにグローバル市場経済において最低限のルールを構築すべきであるのか。残念ながら、政治思想史を専攻する私には国際経済学の基礎知識すら無く、専門的な具体的提言はできない。が、市場主義をガチガチに統制するのではなく、貧国も富国も自己実現の場として市場を活用できるようにしなくてはならない一方、その理念を実現するためには世界市場を最低限度には監視規制する国際機関はどうしても必要である。その折り合いが非常に難しいし、国家主権の問題もある。また、それが既存の国連機構や世界的な団体によって担われうるのか否かも定かではない。高名なエコノミストを含め誰もまだ有効な手立てを講じられていないのだから、一介の学生風情が行おうというのもおこがましい難題ではある。投機に狙われる新興国には短期流入を制限することを許すというのも議論対象としてなりうるだろう。リチャード・ハースとロバート・リタンが提唱したように、国連諸機関が問題のありそうな諸国の外貨準備高、経済収支、非居住者に対する短期債務などの正確なデータを公開し、アジア危機の教訓として、IMFの介入が必要なときには介入の条件として全ての外貨の貸し手にペナルティを課すという案もあるだろう。まあ、こうした専門的な議論は専門家に任せるとしよう。ただ、これらを担いうるのは670