ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回優秀賞ローバルに存在していると前提しているからこそ成立しうるのだ。共産中国だって、グローバル資本主義に関わる以上、その前提からは免れられない。中国は市場主義と計画経済との折衷政策を採っているので、完全な自由市場主義国とは言えないが、これもグローバリズムによって変質を余儀なくされているし、その折衷政策が許容されうるのも、将来的に中国は完全な自由市場経済に移行せざるをえないという予測的確信が存続しうる限りである。その意味で中国の経済体制はグローバル資本主義のレール上に存在しているのであって、かつてのソヴィエトのような存在、つまり資本主義のオルターナティヴとして中国の経済体制が現実的可能性を包含していたとしたら、グローバリズムはその存在を許しはしなかったであろう。現に資本主義の一形態でありながら、アメリカニズム(夜警国家的アングロサクソン資本主義)に対して、冷戦後、唯一、消極的に対抗しえていたドイツや日本など大陸系有力国家の福祉国家的ライン資本主義すらも掃討されつつある。これはまさしくアメリカニズムが経済的繁栄を正当性の唯一の論拠としてグローバル・スタンダードと称し、それによってライン資本主義はローカル・スタンダードとの烙印を押されて否定されて行くという、グローバリズムの「均質化」の過程に他ならない。まして抵抗力の弱小な韓国の財閥経済やインドネシアの集権的経済などがグローバリズムの前に無力であったのは当然であった。これらは典型的なグローバリズムの均質化作用の一例であると言えるだろう。つまり、グローバリズムは世界の均質的経済基盤(慣習を含む)を前提として存在するのではなく、一旦グローバリズムが発生し、その経済的成功によって正当性が担保されれば、アメリカやアメリカ主導のIMFなど国際機関、市場経済的視点のみで評価する格付け機関等々の発揮する強大な資本誘導力を利用しつつ、世界を否応なく強制的に均質「化」してゆくのである。これに対して豊富な外貨準備など巨大な国富を持つ一部の国はまだしも、新興国などは丸腰で翻弄されるしかないのである。もはや、先手を取ったアメリカが国内問題や国益と結び付けてグローバリズムを利用していることは疑いないだろう。無論、こうしてアメリカが自国益を第一にするのは国家政策として当然なのであるが、大手ヘッジファンドLTCMの混乱に示されるように、予測659