ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

[D]経済経済は軍事力に次ぐ重大な国力決定のファクターである。軍事力では世界一を誇るアメリカも、この分野では日本、アジア諸国、そしてECに追い上げられている。第二次世界大戦後、共産主義諸国を除く世界の経済を独占してきたアメリカ経済の低迷、そして日本、NIESを始めとする新工業国の台頭とヨーロッパの再活性化による経済の極の出現が冷戦後の特徴であろう。おして、少なくとも私がこの原稿を書いている段階では(1992年秋)、破滅的とまでいわないまでも世界は不景気に陥っている。その中で、欧州、北米でそれぞれ経済統合が進んでいるのが注目すべきところだ。経済統合のメリットは、まず地域内での資本移動の自由化にある。人件費の低い地域への投資の活発化によって生産コストを抑え、生産物の競争力を増し、長期的には経済生長率を高めて地域全体の経済強化、雇用増大が目的である。しかし、経済統合と第二次世界大戦の勃発前に起こった世界経済のブロック化にはいくつかの類似点がある。当時世界は大恐慌下にあり、植民地を持つ国は保護主義、経済ブロック化に走って不況の流れを食い止めようとし、日本、ドイツなど持たざる国は武力による自国の領土の拡張で恐慌を乗り切ろうとした。連合国のブロック経済は国際貿易量を減少、恐慌を悪化させて国家間の対立を招き、枢軸国の植民地拡張政策は、連合国の利害と真っ向から激突した。北米は自由協定やECは、地域外の資本を排する閉鎖的な経済ブロックを作るのではないとうたっている。ただ、今後の状況次第では第三国の排除につながる新たな障壁が作られ国際摩擦の火種とならないとは限らない。[E]南北問題と環境今後の最も重要な課題は南北差の緩和であろう。環境は限界ぎりぎりまで破壊、汚染され、人口は爆発的に伸びている。生態系の崩壊は土地の砂漠化、機構の変化という形でその年の作物の収穫量を大幅に減少させ、世界的食料危機を招くに違いない。人口の増加によって起こり得るのは特定地域での飢餓のみではない。不衛生、かつ過密ぎみの場所は必ず伝染病の温床となる。エイズが猛威を振るう可能性は非常に高い。そしてそれが先進国64