ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作いだろう。すなわち、明確な侵略行為に対しては、武力によらない制裁から始めつつ、最終段階では安保理決議によって国際的なコンセンサスを確保した上で集団的自衛権を発動するという形が望ましい。ただし、前章で述べたように、無限定の武力行使容認には問題があり、日本としては安保理が何らかのチェック機能を果たすように主張すべきだろう。また、「武力行使容認」自体に対して理事国間での一致がみられないことも十分考えられ、その場合は集団的自衛権もしくは個別的自衛権の発動による解決が図られることになるだろうが、そのような場合にも安保理が集団的自衛権の行使に対して一定の限界を付すような決議(すなわち、○○をしてよい、という決議ではなく、○○はしてはならないという決議)をするよう促すべきではないかと思われる。侵略者に対しては断固たる姿勢をとる必要があるが、その排除にあたって必要以上の強制行動や自己利益拡大行動がとられないような縛りを常態化し、安保理決議の正統性を高めるよう主張していく必要がある。3 LICへの対処現在安保理にもち込まれる紛争の多くはLICであり、そのほとんどは解決をみていない。しかし、それは安保理が無能だからというよりは、そもそも安保理はそれ自体が主体となってLICを解決していくような機構ではないためといえるだろう。トーバルが言うように19、国連は本質的に紛争の調停活動に向いていない。なぜなら、国連は、調停者に不可欠の紛争精力に影響を与える具体的な手段(軍事的、経済的資源)をもっていない。さらには、国連は国際機構の常として国内の政策決定上に交渉やバランスの維持の調整を要する。しかも、対立する提案のどれを採用するかに関する決定権を持つポストが存在していないため、調停者に必要な、交渉をダイナミックかつ柔軟に進めていく能力を欠いている。国連はあくまで加盟国の国益実現の手段の場なのであって、それ自体が自律した政策決定の制度を備えているわけではないのである。トーバルの提案は誠に適切なものである。「国連の欠点を認識し、実際には履行できない任務を国連に委ねるのをやめるべきである。逆に国連側が、問題を解決できるような立場にある諸国家に対して、紛争の調停という、危険に満ちているだけでなく、感謝されることもない任務を引き受けるように働きかけるメカ19トーバル前掲論文90-95頁。621