ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作題に自らの威信や資源をつぎ込みたくないと考えた場合には、問題は国連や他の国際機構にもち込まれることになる。国連にもち込まれるのは、本質的に解決の難しい問題で、人命に対する危険や状況の困難さという点でも高いリスクを伴うものである18」というわけである。案の定、国連はLIC解決に失敗を繰り返し、失望の対象となったのである。以上をまとめると、現代における「国際の平和と安全」への脅威は主として3つある。まず第一に大国間の紛争、第二にそれ以外の大規模侵略、第三にLICである。異なる性格をもつそれぞれの脅威に同じ枠組みで対処することはできない。次章では、本章での整理をふまえつつ、日本が安保理改革に対して何を主張していくべきか論じることにしよう。Ⅳ.国益に即した安保理改革案日本で安保理改革という場合、日本の常任理事国入りや拒否権の是非が論じられることが多い。が、問題は、安保理はどのような機能を果たしうるのか、そしてそのためにはどのような制度が望ましいのか、ということであって、そのような見通しを欠いたまま常任理事国入りを主張するとすれば、そこで拒否権があろうとなかろうとかえって国益を害する結果に成りかねない。他の大国と同様の責任と地位を求めるという心情は十分に理解できるものの、それだけではいかにも戦略を欠いた自己主張でしかない。常任理事国になれば情報が入手しやすいという説明がなされることがあるが、日本は非常任理事国というかたちで7回も安保理のメンバーになっており、その経験からどのような情報が安保理では得られるのか、安保理のメンバーから外れるとどのような不利益があったのか、検証することが必要である。また、安保理で共通のニュートラルな情報だけに基づいて議論が行われるとはとても思われず、自国に都合のよい情報を提示する場合もあるだろう。したがって、不当と思われる情報に反論するためには世界の隅々をカバーする情報収集能力が必要なはずである。安保理に入れば情報が入るというのは、全く受身な物言いでしかない。戦略性を欠いた常任理事国入りは様々な点で国益を害する可能性がある。なぜなら、安保理では「国際の平和と安全」という日本がそれほど得意とするとは思えない領域につい18サーディア・トーバル「国連は本当に紛争を調停できるのか」『新脅威時代の安全保障~フォーリン・アフェアーズアンソロジー』(中央公論社)所収84頁。619