ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
609/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている609ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作の国にも先立って掲げた理想であって、これが人類の究極の目的であることは間違いない。戦後武力を拡大し覇権主義に走った大国が、結局甚大な犠牲のうちに破綻したことを考えれば、日本がこの憲法の趣旨をまがりなりにも守り得たことは幸運であり、人類発展の一つのテストケースであったと考えるべきではないかと思う。その条文が与えられたものであるとせば、日本の安全保障が又与えられたものであっても、何ら卑下しなければならないことではない。それは決して開き直りではなく、人類が英知を巡らせて実現しようとする理想であると捕らえるべきではないか。しかし一方で、日本の安全保障が全面的に外から与えられたものではなく、自衛隊の存在が果たしている役割があること、地上の国家が未だに自衛のための武力を必要とすることも現実である。新しい安保常任理事国の新しい勢力として、日本は一体何ができるのか、日本に何が期待されているのか、そして期待されていない事は何かを充分研究しなければならない。国内では往々にして、過去の安保理の行動を既定のものとして、海外派兵の問題だけが取り上げられている。しかし、多くのメンバー国から日本に期待されていることは、決して軍事力ではないということを日本は認識すべきである。今や第三世界の日本への信頼は、日本が対外的武力を持たないことにあると言っても過言ではないと思う。平和主義の拡大日本の非軍事的平和外交は成功しており、世界の多くの国がそれを評価している。日本に求められているのは、武力によるバランスではなく、平和的共存の精神に基づき世界の利害を調整するリーダーの役割である。そして他の先進国がなし得ない軍備縮小、核兵器廃絶のためのリーダーシップなのである。例えば湾岸戦争では、130億ドルもの戦費をアメリカに拠出する前に、なぜ日本はアメリカ、フランス、中国の武器輸出競争の問題を指摘しなかったのか。日本はなぜこの機に武器輸出の削減または停止を率先して要求しなかったのか。イラン、イラク、クエート問題は植民地時代から尾を引きずる欧米の問題である。日本が血を流さないという非難は的607