ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

門的な軍事面への政策転換である」と言う、主として米国、フランス、ロシアの意見である。一方反対意見は「(戦う国連軍は)必然的に一方にくみし、国連の大前提を破壊するだけでなく、政治的、軍事的にもきわめて危険をともなう」、それに「(国連の本来の役割である)公平な第三者の立場を失わせ、したがって国連による事後の政治的解決を困難にする」と言う、日本、中国、および国連内部の意見である。現実にソマリアの例では、「軍事介入の過程で国連部隊は民間人殺害を重ね、本来救いの手をさしのべるべき人々から憎しみを買い、大失敗を演じた」と言う国際救援組織の強い批判があり、米軍主導の軍事強硬路線を批判して、国連軍に参加するイタリア軍が部隊を安全地帯に移動させるなどの動きが起こっている。米国の意図する肩代わりは、実際には全面的肩代わりではなく、国連軍という名を使う米国主導の派兵であり、そのための軍事費の肩代わりでしかないという実態を如実に現している。安全保障のために国連の機能を強化すことは必要であるが、そのためにメンバー国の軍事力を相対的に下げていくことが必要である。このためには、メンバー国がその国の軍事費の一定パーセントを国連軍に拠出するという案を真剣に検討すべきである。将来、国連自体が軍を指揮して紛争解決にあたる時代が来るとしても、その道は容易ではない。軍事的介入は戦争の予防と停止はできるが、紛争そのものの解決はできない。紛争の公正な調停としては、国際司法裁判所の機能を見直すことが必要ではないか。いずれにせよ、中立の調停者としての国連の本来の役割と、国連軍のあるべき姿とが、今充分検討されなければならないと考える。安全保障理事会第二次大戦の先勝国で占められる常任理事会は、その拒否権のために従来から充分な機能を発揮することができなかった。一方今までの常任理事国の構成は、戦後半世紀の間に大きく変化してきた世界の勢力地図と掛け離れており、世界の利害を代表しているとは言えない。また、常任理事国の国力の低下は軍事的・経済的負担を負えなくなっている。こ602