ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

で真剣に検討され始めたのは過去十年程のことであり、特に冷戦終焉に近づいてからである。世界は今、米ソ対決の場となっていた地域紛争の調停に、新しく代わって働くパワーと方策を探す必要に迫られている。その一方、今まで立ち遅れていた社会、経済、環境問題の対策に全世界の協力を必要としている。そこで求められるのが国連の役割であり、日本やドイツなどの新しい勢力の働きである。もちろん国連の先進国メンバーとして、日本は安全保障にも相当の協力をしなければならないことは言うまでもない。しかし常任理事国となった場合、日本が是非考えなければならないことは、第一に日本は平和憲法を持つ国であることと、米ソや他の旧植民地宗主国に追随して、彼らがやってきたような泥沼の轍を踏むことは絶対避けなければならないということである。見通しと目的を明確にせずに、外交を安易に国連の場に求め、単に安保理常任理事国になることだけを先行させることは危険極まりない。今まで平和主義の道を歩んできた日本が、安全保障のために何ができるのかを充分検討しなければならない。日本が常任理事国となる意義は、拡大する国連軍事費の負担であってはならない。むしろ、戦争回避のために世界の軍備縮小を推進することこそ、日本の負うべき仕事であると考える。もう一つは、国および地域の安全保障を、社会経済開発の立場から推し進めることである。破壊に向かう武器ではなく、建設に向かう経済を安全保障の積極的手段として活用していくことである。たとえばアセアンのように、地域が共通の利害を持ちメンバー国のあいだに協力関係ができていけば、国家間の紛争は必然的に回避できることとなる。従って日本は、むしろこの経済、環境、社会問題の分野でこそ、その実力を生かしリーダーシップを発揮できるものと考えられるし、むしろそこにこそ世界の期待がかかっていることを理解すべきである。600