ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回佳作「21世紀の世界新秩序形成と国連の機構改革、そのための日本の役割についての提言」千田亨第二次大戦後、平和の維持と経済開発協力を主体として進めてきた日本の外交は、開発途上国との間に友好な関係を維持し、相当の効果を上げてきたことを評価されなければならない。それが日米安全保障条約のもとで、過剰な経費と人材を軍備に支出することなく、経済活動に専念できたことに因ることは、しばしば指摘される通りである。しかしもう一つ、日本が海外出兵や政治イデオロギーによって、他国との軋轢を作らずに済んだことにも留意しなければならない。日本が紛争地において血を流していないという非難があるが、類例のない平和憲法を維持する国として、日本がそういう道を進んだことは必然的なことであり、止むを得ないことである。むしろ問題は、日本が自国の安全保障について真剣に考えることなく、世界平和についても厳密な思考をめぐらし、世界に積極的に発言することをしなかったことである。それに加えて、第二次大戦中に被害を及ぼした近隣国との関係修復に、はっきりした理念と態度を示さなかったことが、今日まで世界の日本に対する信頼と日本の世界における政治力を阻害してきたものと考えられる。国内では、長い保守政権が惰眠をむさぼり、派閥抗争に明け暮れ汚職に染まった。堕落した政治は、行政の無責任化と腐敗をもたらし、国の重要問題の解決を先送りしてきた。そしてこの期に、今までに蓄積されてきた矛盾が一気に露呈されることとなった。社会は、自由の観念だけが肥大して、自己の利益だけに走り、責任感を失っている。物質的には豊かな社会で、兵役義務もない若者は気ままな生活に溺れ、政治意識も国家意識も持たず、目的さえ失っている。597