ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

いては、各国の協調が秩序維持の重要なポイントとなるために、多国間の交渉が多くなされるようになる。いわゆる、「会議外交」の再来である。そのために、覇権国との二国間交渉によってほとんどの事が決定されていた覇権システムに比べて、利害調整の時間は長くかかるようになり、交渉結果の予測性も低いものとなる。また、多国で交わることが多くなるために交流が増大し、摩擦が増える15。しかし、ポスト覇権システムの基本構造の一つである各国の協調と利害の調整がうまく進めば、ポスト覇権システムは内在的に崩壊の可能性を秘めている覇権システム16よりもより安定すると言える。各国の協調と利害調整が鍵となる「ポスト覇権システム」の到来。これが、動態分析(循環論)による「世界新秩序」のあり方である。3動態分析(趨勢論)による見方最後に、動態分析(趨勢論)による見方を提示する。この見方は、近代世界システムの変化、そしてトレンドを強調する見方である。ここで挙げられる分析の枠組みとしては、「新中世論」17が挙げられる。「新中世論」とは、これからの世界システムは近代世界システムと全く様相の異なる「新しい中世」とでも呼べるようなシステムへ移行するであろう、と主張するものである。以下、これについて詳しく説明する。18新中世論<新中世論の議論>新中世論者は、世界システムを特徴付ける重要な要素である主体とイデオロギー状況に注目し、これからの世界システムは近代世界システムよりもむしろ、ヨーロッパにおける中世の世界システムに似るであろう、と予測する。中世近代将来(新しい中世)主体の特徴多様(教皇・皇帝・都市・大学など)イデオロギー状況普遍的(キリスト教)対立(自由主義的民主制多様(国家・政府間国際組織・NGO)普遍的(自由主義的vs正統主義、ファシズム、民主制・市場経済)マルクス・レーニン主義)経済相互依存状況<<他の世界システムの存在あり初期にあり、後期になしなし55615山影進「対立と協調の国際理論」第一部・第二部。16覇権システムは、覇権国に国際公共財供給の過剰負担がかかった場合、覇権国が衰退し、システム自身が徐々に崩壊していく可能性を秘めている、と言われている。17代表的な論者としては、Hedley Bull、田中明彦が挙げられよう。18田中明彦「新しい中世」第7章、第8章。