ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
557/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている557ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第14回優秀賞(1)秩序維持の主体:覇権システムにおける秩序維持の主体が覇権国であったのに対し、ポスト覇権システムにおいては共同管理システムを構成するコンソーシアムが秩序維持を行う。このコンソーシアムは問題領域別に構成されるので、国際秩序は重層的になる。このため、コンソーシアム間のメンバーの重複が発生するが、この重複はコンソーシアム間の協調と調整に寄与することになる。(2)秩序維持の基本:覇権システムにおいては、覇権国が他国に対して圧倒的なパワーを保持していた(国際格差が非常に大きかった)ことが秩序維持の基本となったが、ポスト覇権システムにおいては、コンソーシアムを形成する関係各国間の政策協調と利害の調整が秩序維持の基本となる。よって、ポスト覇権システムの秩序維持においては、国際格差を可能な限り小さくしていくことが重要になってくる。これは、具体的な例を挙げるとすれば、民主主義・自由主義経済の各国でのあり方などといったものが挙げられよう。(3)国際公共財の負担プロセス:覇権システムにおいては覇権国が集中的に国際公共財を供給していたが、ポスト覇権システムにおいては、様々な国々が共同で供給することになる。つまり、各国がそれぞれの得意とする領域において貢献する、という体制を取るのである14。また、各国が国際社会に貢献する機会が増えることにより、名誉を求める傾向が強くなり、フリーライダーの割合は、覇権システムにおいてよりも減少すると考えられる。以上、ポスト覇権システムの基本構造について述べてきた訳であるが、このようなポスト覇権システムはどのような特徴を備えたものであるのか。以下、述べると、まず、そのシステム内で行われる交渉の形態についての特徴が挙げられる。ポスト覇権システムにお13猪口邦子「ポスト覇権システムと日本の選択」103頁。14これをより分かり易く説明したモデルとして、Charles W. Kegley Jr.らが提案した「二層構造モジュール方式」のモデルがある。このモデルは、現実の世界システムの状況と同様に、世界システムには大国と中小国が存在すると考える。そして、それぞれの層(大国層・中小国層)を仮定し、その問題に深く関わる大国層と中小国層の国々が、案件によって異なるメンバーシップを保ちながら協力する、という方式である。<二層構造モジュール方式>問題1問題2大国層A B C DA B C D中小国層WXYZWXYZ555