ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

持続性に着目した静態分析とは対照的に変化と変化のパターンに着目した分析である。その中でも、2の動態分析(循環論)とは、近代世界システムの歴史を通してあるパターンで繰り返す現象が存在するかどうかということについて注目する分析である。また、3の動態分析(趨勢論)とは、近代世界システムの歴史を通してある方向に向かって直線的に変化していく現象が存在するかどうかということについて注目する分析である。ここでは、これら3つの分析方法を用いて21世紀へ向けた「世界新秩序」を予測した3つの見方を提示する。その上で、進みつつある現実と照らし合わせて、「世界新秩序」は実際どのようなものになるのか、について議論する。3.3つの見方による「世界新秩序」1静態分析による見方まずはじめに、静態分析による見方を提示する。ここでは、先ほども述べたとおり、「パワー」という概念を用いてその分析を見ることで世界システムを構造的に捉える。ここで言う「パワー」とは、「ある主体が他の主体に働きかけて自分にとって望ましい行動を他者に取らせるか、自己にとって望ましくない行動を他者が取らないようにする能力」のことである3この概念を通して国際社会を捉えた場合、世界には大きな「パワー」を持ついくつかの極が存在し、それによって国際社会のあり方が規定されることとなる。このような認識枠組みを用いて冷戦後の国際社会のあり方、つまり我々がここで言う「世界新秩序」を予測した興味深い見解の一つに、ジョゼフ・ナイが1991年にまとめた、5つのシナリオがある。これは当時存在した、冷戦後の「世界新秩序」についての専門家の予測をまとめたものであるが、以下、これについて説明する4と、(1)「二極体制への回帰」シナリオ旧ソ連が保守化し、再度力をつけてアメリカと並ぶ軍事力を維持することによって世界が二極に戻る、というシナリオ。ナイは、旧ソ連には経済発展に必要不可欠な情報処理能力が欠けていたために、再度力をつけることは不可能である、としてこのシナリオは現実性が無いとしている。5503衛藤藩吉ら著「国際関係論」59頁。4J.ナイ「『新世界秩序』はどこへ行った」『中央公論』92年7号。