ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回優秀賞に国連の基本的方針と活動計画を立てる必要が有ると思う。また国連カンボジア暫定行政機構のような地域紛争後の国家再建を、世界各国の援助、協力を得て、国連の指揮のもとに行うといった試みは注目すべきものであり、今までの単に紛争を終結させるだけの役割から、積極的に紛争当事国の国家再建に関与して行くという点で、高く評価されるべきであろう。これにより難民として流出していた人々を救出することも出来、また当時国だけに委ねていれば荒廃した都市や農村の復興、社会秩序の確立、政権の安定化には長い時間がかかり、結局混乱の内に国家再建を果たせないまま、また紛争状態に逆戻りしてしまう危険性が高いわけであるから、これを防止する上でも大きな意味を持つと言える。また、あくまでも大国主導によるお仕着せの再建ではなく、当時国主導による再建でなければ意味がなく、国連がいかに大国の利害を調整して行くか、またいかに平和裡にことを成し遂げられるか、その指導力が問われると言えよう。また、先進国は発展途上国に兵器を大量に売却し、あたかも新兵器の実験場のようにしているが、発展途上国の紛争で先進国が潤うという構造は否定されるべきであるし、また戦争や軍隊の派遣、駐留あるいは軍事力の増強による国防費の支出は、先進国、発展途上国双方にとって経済を圧迫させ、悪化させる要因となるだけで、過去の経験から見ても軍事力の行使は紛争の根本的な解決手段にはならないのである。このことからも武器の禁輸措置及び生物、化学兵器を含めた軍縮、軍備管理交渉は今後も国連の平和に向けての重要な役割と言えよう。そしてこれからは紛争が起こってからの対処ではなく、いかに紛争が起こるのを未然に防止するかを第一義的に考える必要が有り、その意味で紛争の根底に有る社会的、経済的要因にも目を向けて行かなければならないであろう。東西冷戦が終結し、全世界を巻き込んだ戦争は当面起こらないであろうという意味での世界平和は大きく前進した。しかし一方では、冷戦下、強大な軍事力のもとに置かれていた国際的な権力基盤は、国際的な経済交流の拡大に伴う諸国間の経済的相互依存関係の増大により、次第に経済力へと移行し、その結果米ソの双極構造を形成していた国々は軍事的ブロックの維持よりも自国の国益を追求し始め多極化へと向かい、また北側先進国と南53