ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

事国(ないし準常任理事国)入りを認められるようなことがあれば、国連総会の場で日本政府が特に意識的に強調しなくてはならないのは「新しい世界秩序への貢献」のみならず、まさに世界に向けて(とりわけアジアを意識して)の「過去の行為についての決然たる清算」行為であると思う。経済面では「日本に習え」を唱導しながらも、政治面ではアレルギーにも似た反応を示しがちな国や指導者がアジアには少なくないのが現実であり、これらの人々のもっている「日本は『国際貢献の美名の下で、経済大国の次は軍事大国、政治大国としてアジアでのヘゲモニーを握ろうとしている』(陸培春「アジアからみた日本の『国際貢献』1993年労働旬報社)との警戒心を軽視することはできない。今年9月23日の日米新ガイドライン決定直後より、政府は中国、韓国、東南アジアなど周辺諸国に政府高官を派遣し、新ガイドラインの内容について理解を求めるための説明を行っているが、これも同様の観点から行われているものと信じる。この点ではわが国はいささかも労を惜しんではなるまい。その際に、わが国が世界秩序の新しい姿を形作ることにより積極的に行動することは、決してアジアの脅威となることではないのだということを、政府は明確に説明できなくてはならないであろう。新しい世界秩序の形成とは、かつての米ソ両大国の核による抑止力を背景とした古い時代の世界秩序を終わらせ、いわゆるリアリズムの政治が地球を支配した時代から民主的論理が支配する時代への変化を意味するはずであり、そのためには、日本がとるべき道は決して国際社会の中で沈黙することではなく、行動することであると思う。21世紀においては、経済面とて、国際社会が共通の理念をもたずして人口問題や地球環境汚染の問題に対処し、世界経済の持続的発展を達成することは不可能であろう。従って、国際政治の分野では冷戦終焉後、経済的問題にもまして国家間の共通理念が一層明確に形成されることが要請されているのが現状である。21世紀の世界秩序形成に向けて、国際政治の新しい理念を形成するための原動力となることこそは日本の責務ではなかろうか。このことは、日本が国連の5大国に続く大国の地位をめざすというような古い時代の発想ではなく、20世紀的世界秩序の終焉を体現し、地球的ダイナミズムを生むために力を尽くすことなのである。こうした点について、アジアの国々の日本に対518