ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

結局、国連軍に参加する各国部隊のうち日本の自衛隊のみが特別扱いを受けることを意味することになるだろう。しかし、そもそも法理論上は、常任理事国として安保理事会の武力制裁決議に賛意を表明し、安保理の総意を形成する行為は共同の意思決定行為に他ならず、仮に日本の自衛隊の武力行使を否認し米軍を主とする国連軍という編成になろうとも、これは、従来の日本の立場からすればやはり憲法第9条に抵触する可能性があるといわねばならない。実際に武力の行使を行うかどうかのみならず、安保理の意思決定にどれだけ積極的に関与するかが重要なのである。この点において、従来日本政府がとってきた立場との整合性を保ちうるであろうか。憲法とPKFの関係については、政府は、仮に全体としての平和維持隊などの組織が武力行使にあたるとしても、自衛隊が武力の行使にあたらない範囲で参加することは憲法違反ではないと考えており(121国会平成3年9月25日における工藤内閣法制局長官の見解)、また、PKOとの関係については、政府は、自衛隊の参加が武力行使を前提としない限り、憲法前文のいう平和主義、国際協調主義の精神に合致するものであるとの考えを示している(122国会平成3年11月27日における同長官の見解)。また、集団安全保障と憲法の関係については、憲法の第98条2項に従い国連憲章上の責務を果たすが、日本の自衛隊が武力行使を行うことはできないとの考えを示してきている(129国会平成6年6月13日における大出内閣法制局長官の見解)。これらの立場に共通するのは、PKFやPKOを通じて自衛隊が武力の行使を行うことは憲法違反でありゆるされないが、その限度内でこれらの組織に参加することには憲法上の問題はない、との考え方である。とすれば、憲法の掲げる国際協調主義の建前からすれば、安保理常任理事国として日本が武力制裁についての共同意思決定に参加する行為も一見問題がないようでもあるが、やはり、憲法第98条のいう「確立された国際法規を遵守する」ことと日本が安保理常任理事国として国連憲章第7条が定める武力制裁の共同意思決定行為に参加することとは法的性格を異にしているといわざるを得ない。拒否権を有する常任514