ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

上に述べられているような事態が国際社会において今後頻発するであろうことは確実であると思われるが、その際に、従来経済優先の政治・外交を行う傾向が顕著であったわが国は、一体どのような行動をとりうるであろうか。この10月、香港の株式市場での株価の急落は瞬く間にアメリカの市場、ロンドンの市場、そして日本の市場へと波及し、いずれの市場も深刻な下げ幅となったことは記憶に新しい。かように、今日の市場経済は、ひとりアメリカやヨーロッパを中心に動いているのではなく、まさに市場横断的に推移していることはいうまでもない。経済がそうであるかと同様に、政治面でも特定の国家や地域が長きにわたってヘゲモニーを握り続けることが困難な時代に入っている。ここに国際連合と日本の出番があるはずである。かつてモーリス・ベルトランは、現行の国際憲章の改正によって、国際社会の中でとみに需要を増してきている経済問題を扱う組織としての「経済国連」の創設と、その上部機関としての「経済安保理」の設置を提案したが(「国連再生のシナリオ」1991年国際書院)、この提案は、今日の国際社会が「平和」や「安全」の問題を経済問題と切り離して論じることができないほどにポリティカル・エコノミー化している現状からすると卓見ではあるが、一方では国連の現状から見ればまだ時期尚早にすぎると思う。国連システム、とりわけ国連の実質的最高機関とされる安保理が現状においてどのように運営されているかをもう少し具体的にとらえておく必要があると思う。前掲の「地球化時代の国際政治経済」では、安保理運営の現状を次のように指摘している。「安全保障理事会は実質的には非公式会合方式で運営されている。議事録も報告書も作られない常任理事国だけの非公式会合が常態になっているのだ。国際機関における非公式会合の有益性を否定するつもりはない。しかし、非公式会合の常態化は常任理事国による『安全保障理事会の私物化現象』といってもいい。」安全保障理事会の審議の透明性と公開性が侵食されているのではないかと筆者は強い疑念を抱いているのであるが、組織運営の面でのこのような問題点については、1997年版の『外交青書』は、国連総会の下に設置されている「安保理改革に関する作業部会」にお512