ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

裏腹に、日本の国際化にとってはいわばブレーキとしての役割を演じてしまったことはなかったか、との批判も現実に存在している。政治の領域では、哲学や宗教と異なり、理念のみではなく、結果責任が重んじられなければならないとすれば、彼らがイデオロギー的国際協調に目を奪われるあまり、日本の進路を的確に読み、そして行動するという努力の点において欠けていた面があったことは否定できまい。一方、旧革新勢力のイデオロギー的傾向により、長らく政府与党としての立場を余儀なくされた自民党は、政党間での現実主義的立場における論議を行う経験に乏しく、旧派閥がその役割を負う羽目となったが、同一政党間での党議に拘束された議論が政治家や国民のとぎすまされた国際感覚を涵養することにつながるはずもなく、したがって「一国平和主義の非」だの「国際貢献」だのという、真に他国の目を意識した上で日本の進路を議論する習慣をわが国の政府と国民がもつようになったのは、実に1991年の湾岸戦争勃発以来のことなのである。このように、わが国においては、イギリスやアメリカにおける政党政治とは異なり、戦後一貫して、真に国際的視野に立った現実路線の政治が行われてきた期間がほとんどないために、他の先進諸国に比べてこの点ではいささか自信喪失気味なままに国際化の問題を考えなくてはならない現状ではあるが、こうした日本的特殊性をテコに、これを日本的ダイナミズムに転換することは不可能であろうか。この点について考察してみたい。3.日本的特殊性をダイナミズムに(安保理の正常化に向けて)1991年、湾岸戦争開戦直後にアメリカのブッシュ大統領が呼びかけた「新世界秩序」がいかなるものかについては多様な理解が可能だろうが、少なくともブッシュ大統領がこの時国際社会に提案した新しい世界秩序とは、米ソ間の冷戦終結を受けて、各国の経済力の相違やNGO、あるいは民族間の対立や宗教的対立をも含めた多元的な世界秩序の形成に向けてアメリカがリーダーシップを発揮するべきだとの意思表明として理解することができよう。実際、国連のPKO活動の広範さにも示されるように、今日の国際社会で生じ510