ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

協会ならぬ一新聞社が意図的に国民間に憲法論議を惹起しようとする姿勢に一種の奇異な印象を受けざるを得なかったのである。しかし、21世紀を目前にした今の時期に、日本人が新たな憲法論議を尽くし、第二次世界大戦後の50余年を総括することは、国内に蔓延してきている国家としてのアイデンティティ喪失の感覚を払拭し、新たな日本のダイナミズムを生むためにはどうしても欠くことができないことである。そして、それは決して日本の過去の歩みを全否定することにはつながらないはずである。2.新しい世界秩序形成に向け行動するための基礎はできているかわが国が新しい世界秩序の形成を明確に意識しつつ行動するような機会は、大戦後長らくわが国には無かったといってよいであろう。それが急遽主要な国民的課題として浮上してきた背景には旧ソ連の崩壊に伴う東西対立構造の終結や湾岸戦争の勃発、さらには中国の社会体制の微妙な変化など多くの政治的なモメントがあることは明らかであるが、戦後のわが国の内的な変化、とりわけ経済面での変化が大きな要因をなしていることを看過してはなるまい。とりわけ日本の経済の伸長ぶりについては、宮澤喜一元首相の「経済的超大国だが政治的小人」という自己評価とは裏腹に、サミットやG7(G8)を通じて国際社会の中で次第に影響力を高めてきたことは周知の通りである。ポリティカル・エコノミーの時代にあって、経済発展とともに、わが国は否応なくその政治的動向についても諸外国が関心を持たずにはいられない国へと変貌してきたのである。それでは、日本政府および日本国民は経済力の慎重ぶりに見合うほどの外交姿勢や国際感覚を身につけてきているだろうか。かつて親日派の米大使として知られたエドウィン・O・ライシャワー氏は、日本人は適応性にすぐれており、よりすぐれた制度や思想の価値をいったん認めたとなると、いさぎよく旧来の思想を捨て去ることができる民族であると評価したが(「日本《過去と現在》」1967年時事通信社)、もちろん氏は歴史的視点から、明治維新や敗戦後のめざましい経済復興などの一大転換期を念頭にこのように考えられた508