ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ガリ事務総長のこうした政策転換の背景には、PKO強化を進めたソマリアでの手痛い失敗があるといえよう。アメリカが国連PKOに背をむけるなど、国連が加盟国から兵力や資金の十分な協力を得られなかったこと、国連に寄せられる期待は有形無形にして増大しているにもかかわらず、現実に対応できるパワーは極めて弱いことを露呈してしまった。米国防総省の報告に「米軍がソマリアで得た教訓は、国連は軍事作戦を指揮できないということだ」という、手厳しい表現がある。二.国連に求められるもの国連の力が弱いと言っても、国連に対する期待が高まることがあっても、期待感が大きくそがれることはないであろう。万能でないにしろ、諸々の問題を解きほぐし、この現実のなかで大いに頼りになる存在であることは、国際連盟から引き継ぎ、発展させてきた「行政連合」としての実績が如実に物語っている。結論を急ごう。国連に求められるものは何か。それは統合性とさまざまな利害対立を平和的に裁きうる総合調整力だと考える。平たくいえば、世界を束ねる、まとめる力と、問題の処理能力、とりわけ紛争解決の力ということができよう。いずれも国連がいまだ十分具備せざる能力・条件であるが、幾多の試練、教訓を積み重ねて、やがて一定のルール、あるいは制度を、人類の英知は創造してゆくだろうと、楽観的過ぎるかもしれないが、信じてゆきたい。自然科学界は天才のインスピレーションがしばしば未見の新発見を導き出すことがあるが、社会科学の世界は凡愚な事実、体験をいろいろと収集、分析し、教訓を学びとるといったまわりくどさがある。ヒト、モノ、カネ、情報の移動スピードがアップしている。インターネットで世界の人々とアクセスすることが可能になっている。内から外から「国境」を越える力が働いている。柔軟な国家は国家のボーダーの高さをより低くして、風通しがずい分よくなったかのように見え、ボーダーレスがより進化し、トランス・ナショナルな展望が容易に開かれるかとさえ思えた。408