ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作のか。中国は日米のTMDを中心とした新防衛構想には多大な懸念を抱いており、米中関係の現在を考えても、中国を責任国家に転じせしめるには多国間協調の枠組から関与した方がよいのではないか。現在、中国はARFには参加しており、不完全ながらも「国防白書」の公表には応じている。第四に、仮に安保がグローバル化されるとすれば、それはアジアによりコミットされる形でなくてはならない。安保関係のグローバル化とは安保条約の改訂を意味しているのではなく、安保条約の条文の解釈を柔軟にすることによってグローバルな機能を持たせることである29とすれば、その拡大的な機能がよりアジア・太平洋地域の安全保障レジームの新たな機能に積極的に影響を与えるものでなくてはならない。もちろんARFの機能化に伴って日米安保の機能がARFのそれに包摂される可能性もなくはない。同地域の安全保障にとって10万もの米国の軍事的プレゼンス、それを経済的に支えるパートナーとしての日本のその役割は決定的に重要である。しかしながら、その機能とARFとの機能の連結が実質化されれば、日米軍事同盟は解消され得るのであり、これは同地域のパワーバランスに基づいた結果ではなく、むしろレジーム間の純粋な機能的次元での整合であり、一体化である。それが実際に起こり得るにはまだ時間がかかるであろうがその時には同地域には新たな政治空間の変容が見られることになる。日本は今後、「アジアの日米」の視点で日米安保レジームの機能の見直しを図り、また多国間の安全保障レジームの可能性を常に意識した作業工程にのぞむべきである。具体的にはARFにおける「信頼醸成」部門の責任国として、OSCEでの信頼醸成措置を鑑みつつ、レジームのルール作成、政策決定の手続きにまで発言権を増す努力を絶やさないことである。それを実行的レジームに近づける必要があるのである。ただ、その際に我々は唯一の被爆国としての平和国家日本の「規範」をそのレジーム内においても明示し続けることが肝要である。おわりにR.マニング、P.スターンは「太平洋コミュニティーの神話」と題する論文でARFの可能性について「国連安保理、IAEAなどのより大きな上部メカニズム、そして二国間関29西原正「日本における安全保障条約の意義」『国際問題』90’12月No. 369 6頁。403