ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

した。24一つは「安保条約」そのものを指し、日米軍事同盟条約に含まれる条文的規定を指している。また第二のレヴェルは「安保政策」であって、政策の基本にある外交姿勢だとか、その前提にある国際情況の認識も含まれる。第三のレヴェルを仮に「安保構造」と呼ぶことにすると氏は述べた上で、その構造は政治構造、経済、社会、文化構造に分かれるとしている。50年代、又は60年代の米国の経済、社会、文化構造の一種の模写のような形で日本社会の構造の枠組が形成されたという問題を「安保構造」の問題だとしている。この文化構造であるが、これは「近代化論」的な価値観を土台にし、欧州諸国にアジアで最初にキャッチアップした優越感がさらに基盤になっているものである。アジア蔑視の考えが広く浸透したものだと考えられる。日米安保体制の見直し、引いてはアジア安全保障の構想を練る上で、この三つのレヴェルの「日米安保」それぞれを分けて何が再考され、何が温存されるべきかを考える方がよいと思う。では、まず第三のレヴェルとしての「安保構造」からであるが、これは現在はや動揺をみせているかに見える。アジア諸国に対する根拠なき優越感は日本の中からは失われつつある。21世紀の世界の成長センターと目されるアジア諸国の経済的な発展は著しいもので「アジアの奇跡」といわれ、我々は同地域との間にイコール・パートナーシップを築き上げたいと躍起になっているのが現状である。そこにはもはや優越感ではなく、同地域にもつ日本の過去の負い目とそれを根底にした平等志向がある。また「安保構造」を支えた米国の経済構造、とりわけ大量生産・大量消費・大量廃棄にみられるアメリカの流儀そのものに対してもその価値が地球規模で疑問視されている。米国の凋落の是非をめぐる一連の論争も、国際レベルでのアメリカン・スタイルに対する疑問が浮上した一例だったと言える。この「安保構造」がアメリカン・スタイルの模写のようなものであったがゆえに極端な親米路線を基調とする関係が出来上がったのである。今後の日米の政府間レベルでの協議において、日米関係の見直しが進むであろうが、まずは真に日本の国益にかなった路線であるのかどうかを明確にした上で検討されるべきである。では第二レヴェルとしての「安保政策」はどうか。その政策体系に含まれた外交姿勢や国際情況の認識の再定義ということになると、我々はアジア地域40024坂本義和『軍縮の政治学』岩波書店1982年112頁。