ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作コヘインは新レジームの創出は旧レジームによって蓄えられた相互信頼によって促進されると述べ、新旧レジームの機能の結びつきの中に、いかにレジームが形成され維持されるかのみならず、いかにそれが進化するのかの手がかりを見ている。18国家の代替物としてレジームを想起し、それが世界構造を形成するその過程ではなく、諸国家が共通認識の下に集合し、脱国家的に総和以上の有機体を形成する過程に注目する。また、旧レジームとの関係を考えることで新レジームの機能が明確になるという示唆を得た。ならばアジア安全保障の構想を考えるにあたって、新レジームとしてのARF、さらに旧レジームとして日米安保体制を引き合いに出して検討することにしようと思う。昨年、ASEANと日・米・中など18ヶ国・機構で発足した外相会議をさらに拡大した安全保障の多国間的枠組がASEAN地域フォーラム(ARF)である。昨年の議長声明をさらに進めるかたちで今年、7月第二回会議が開催された。「信頼醸成(CBM)」「予防外交」及び「紛争に対処する手法の綿密な検討」19の三段階で進められることが確認されている。また政府間レベルの「信頼醸成」及び「PKOを含む国際的な協力活動」の両分野で専門部会が設置されることになり、常設機構への第一歩が踏み出された。20ちなみに日本はインドネシアと共に「信頼醸成」部会の共同議長国に就任内定している。この「信頼醸成」措置としては制服組の交流、防衛政策・白書の自主的な公開、また国連通常兵器移転登録制度への参加などが挙げられている。そのさまざまな措置に対しての参加国の足並みであるが、ARF参加国全てにとって無理のないペースで進められる旨が今年の同フォーラムの議長声明に記されている。昨年産声をあげたばかりのARFに対して単なる「お茶会」に過ぎないのではないかとの批判と悲観論があるが、ますは同地域最大の脅威と見られる中国を引き込んだ点は大いに評価できる。中国と建設的・積極的に接触する場は他にはないのである。また台湾問題をめぐっての深刻な対立に目下ある米・中関係が外相会談をもてたのもARFという場があってのことである。だが、まずは我々がARFに関して認識すべき点は、「共通の家」がもてないと悲観視されていた同地域に安全保障に対しての共通の認識が相互確認され、18 R. O. Keohane p. 79.19「紛争に対処する手法の綿密な検討」は当初は「紛争解決」であったが、決定を強制される可能性を懸念する中国を考慮してこの表現に替わった。20 95.7.30朝日新聞。395