ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ることが期待されるのである。機能的説明を適切にテストするには単なる国際レジームの存在を示すことではなく、アクターの行動がレジームを通して唯一、もしくは少なくとも効率的に与えられた便益によって、またルールの存在に結びついた威信への関心によって動機づけられていることを示すことである。16国際レジームがある問題領域において特定の仕事をするという事実ではなく、国家行為を動機づけたり、それを説明する際に持つレジームの重要性に機能理論は関心を寄せる。パワーの成層の状況によっていかに安全保障レジームが構成されるのかといった構造重視の思考法では、日本はアジア地域のバランサーとして行動を起こすべきだとの主張もあったことは前に見た通りであるが、現憲法の下では、現在の基盤的防衛力を旨とする防衛の基本方針の下にあっては日本が軍事的なパワーのバランサーになることは到底考えにくく、唯一の被爆国としての思想・信条を越えた非軍事国家を志向する国民感情を考慮に入れるとなおさらのことである。むしろ、安全保障レジームの機能そのものをいかに高めていくか、いかに国家のパワーに指向する行動を制限するようなルールのセットを作り上げていくかに積極的に関与するのか。こうした視点に立った方が賢明である。では、実際の世界政治の中での国際レジームの機能の可能性を探るにあたり、我々はまず以下の点には注意しておく必要がある。まず第一に、国家の代わりにレジームを考えることは機能主義には極めて不都合だという点である。というのは機能理論は国際レジームの促進する役割がいかに共通利益を認識させることに貢献しているかを強調するものであり、国家に代替し得る単位としてのレジームを想定するような超国家主義(supranationalism)の系譜にはないからである。国家を越えて的な発想それ自体はロマン溢れたものだが、安全保障の枠組みを形成するには超国家である必要はなく、脱国家主義(transnationalism)的な発想に依るほうが自然である。国民国家に代替し得る単位を模索する試みが学問的にはじまりつつあるが、17メインアクターを国家に限定し、その総和を超えた機能的な集合体を想定する方がむしろレジームの機能理論に忠実な視点であると考える。第二に旧レジームと新レジーム両者の機能の連繁を重視するという点である。R.39416 S. Haggard and B. A. Simmons p. 508.17例えば、高谷好一『新世界秩序をもとめて』中央公論社1993年。