ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作のアプローチのうちの構造的手法に立った国際レジームの生成・維持の考察に両論文の共通項を見いだすことができるのではないか。ミリタリー・パワーの層、パワー構造によってその結果としてレジームが創出されるという立場よりもむしろ、安全保障レジームを機能的に分析し、その可能性を論ずるほうが冷戦後・覇権後の国際認識に合致するのではないか。大国の覇権・力の後退、衰退の意味は、大国(アメリカ)が国際経済の分野でも国際安全保障の分野でも一国のルール・オブ・ゲームズを創出・維持するここの正当性を今日の世界が喪失してきたことである。15構造のみではレジームの性格や国家の性格を深く予測できず、「構造」理論は決まって国内の政治変化に立ち戻らなければならないし、そういった理論の本質からいっても、構造的アプローチはレジーム創造・維持のプロセスの理解にとっては有益ではない。また覇権の衰退、それに伴った次期覇権国家の予測といったパワー構造の図式をアジア・太平洋地域に適合させるばかりではその構造内に確実に芽を見せつつある他国間の安全保障レジームの可能性を看過するものである。レジーム形成と超大国を因果論的に直結させる視点は米国の凋落、その米国を排除した形でのレジーム提唱の動き(EAEC)にもそぐわないものである。パワーの存在をレジームの創出に、パワーの不在をレジームの衰退に直結させることはできず、パワー構造の結果としてのレジーム(ルール・セット)ではなく、レジームの機能を通した各国の自発的連帯の動きが同地域には確実に起こっているのである。2.機能論の立場に立つと、国際レジームは不変のニーズに対する多かれ少なかれ効果的な反応だと考えられる。その機能を重視するのであるから、レジームを通してどのように国家の行動が制限されるかに焦点が絞られ、構造的説明に比してどのようにレジームが構成されるのかへの関心は低い。ゆえにどのように、いつ国際レジームが供給されるのかということよりも、むしろいつレジームが要求されるのかといった点がこの理論で特定化され15鴨武彦『国際安全保障の構想』岩波書店1990年153頁。393