ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作は「文明の衝突」の構図を同地域に見て、レジーム生成の可能性を地政学的要因のみから否定するものが多く、また後述するが構造的アプローチに依拠したところで、同地域に積極的平和をもたらす見方は永遠に不可能だとさえ思えるからである。ここでは機能重視の視点と、その比較を通じての構造主義的な説明の視点の二点に的を絞ってみることにする。最近「フォーリン・アフェアーズ」誌上において日米安全保障条約の是非をめぐり論争が戦わされた。11論者はC.ジョンソン(E. B.キーンは共筆者)とJ.ナイであり、前者は日本異質論の旗頭として同条約の平和的な解体を強く訴えるのに対して、後者は現国防次官補(年内に辞任、ハーバード大学に再就任が決定している。)の立場から二国間同盟主義の重要性を説き、それに基づいたアジアへのコミットメント、アメリカの同地域でのリーダーシップを主張する。J.ナイの外交哲学は、P.ケネディとの「大国の興亡」論争以来一貫したものであり、アメリカ衰退論に反論するかたちで、アメリカの優位を説き続けている。12さてC.ジョンソンらはアジア諸国が日本のバランサー的役割を期待しているとし、日本はアメリカの庇護から早急に脱することを主張する。このアメリカの日本に対する態度は真の同盟国として行動する日本の能力を疑い続けるもので、この疑念こそがアジア・太平洋地域の深刻な脅威であるとしている。そのことによって日本の政治家の中に堅固な外交政策の専門家集団が形成されなかったのだとされる。またバードン・シェアリングの観点からみた日米両国間の不平等からも早急な日米同盟の解消が主張されている。しかし、日米安保体制の維持によって日本の軍事大国化・核大国化が阻止されており、日本脅威論が和らいでいるとの見方もあり、またアジア諸国が果たして同地域におけるパワーバランサー的役割を日本外交に期待しているのかというと疑問が残る。勢力均衡観に基づいた軍事パワーの構図の中で自らの位置を決定するようなパワーバランサーとしての役回りではなく、むしろ現在の自由貿易体制を維持し、発展させるための努力を欠かさないことをアジアの中の日本の役目だと認識する論者の方が同地域には多く、その理由の多くは仮に国際貿易がストップした際の日本の何かしらの行動に対する大きな懸念に基づいたものである。1311“Foreign Affairs”, July/August, 1995, p. 90-114.12 J.ナイ『不滅の大国アメリカ』久保伸太郎訳読売新聞社1990年、“American strategy after bipolarity,”International Affairs 66. 3(July 1990).13例えば、リー・クアンユーの発言NHK「戦後50年・世界からのメッセージ」95.8.15放送。391