ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第12回佳作する「東アジア戦略レポート」(95年2月)には日本との同盟関係の強化が明示されており、それに伴う安保のグローバル化が暗示されている。さらにTMD(戦域ミサイル防衛)4参加の米国側の要求を承諾すれば、同安保体制がより堅持されることは間違いないと思われる。日米安保体制の再検討が議論されようとしている現在、折しも我々はアジア・太平洋地域で自らの多国間的安全保障システムの構築にも着手しはじめているのである。日本は新たな政治空間、不戦共同体としての可能性を模索しつつあるアジアの中に身を投じるにあたり、旧来の米国との安保関係にどのような意味合いを新たに持たせようとしているのだろうか。この点が曖昧なままであれば、今後の日本外交の明確な方針も立つまい。従って戦後「長い平和」を保障し続けたこの日米安保体制に関してもその議論の域を広げ、旧レジームとしての同体制の機能と新レジームとしてのARFの機能との接点の可能性を探りたいと考える。この接点に今後の日本外交の座標軸が見えてきそうだからである。しかし、まずはケースとしてのARFの理論的基盤となる「レジーム」という概念(国際政治学でいうところの新現実主義の一潮流たる国際レジーム論の枠組で説明されるもの)をまずは概観する必要がありそうである。1.S.クラズナーによるとレジームとは「行為主体の期待が所与の国際関係の問題領域に一点集中していくような暗示的、または明示的な原則、規範、ルール及び政策決定の手続き」である。5また、R.コヘインによるならば国際レジームとは「半同意」のようなものであるとされ、この同意とは契約のように相互に有益な方法で関係を構築するのに役立つものと考えられる。さらに国際レジームは慣習にも類似していると述べられている。「共同体の中で共通の知識と見なされる慣習。それらが唯一最善のものだから従うのではなく他のアクターも従うから自らもそうするといった習慣である。これらの取り決めが共通にもっていることは、それらが合意が集権化された強制力を持つようにと意図されたのではなく、むしろ他国の行為のパターンに対する揺るぎない期待を相互に確立すること、また4 TMDに関しては、山下正光他『TMD戦域ミサイル防衛』TBSブリタニカ1994年。5 Stephen D Krasner,“Structural Causes and Regime Consequences: Regimes as Intervening Variables,”InternationalOrganization 36(Spring 1982), p. 185.389